学校で動物を飼う意味とは?
新潟県獣医師会会長・宮川 保氏
「動物飼育を通して生命を実感させ、情愛豊かな子供を育てたい」という趣旨で行われている全国学校飼育動物研究大会が第20回を迎えた。「学校で動物を飼うことの意味を改めて考える」と題して、このほど東京都文京区の東京大学弥生講堂で大会が行われた。獣医師の立場から新潟県獣医師会の宮川保会長は学校で動物を継続的に飼うこと、飼育・管理について来場者と共に考えた。
飼育活動通じ生きる力育む/学校現場と連携し尽力する
動物を飼うことによって子供たちは、心豊かに育ち、生命の大切さを理解するようになり、他者への思いやりを持つようになった。アレルギーとか鳥インフルとかで、動物飼育をやめる学校もあるが、動物飼育が不得意とか、苦手、面倒などと考える先生が言い訳に使っているように思えてならない。
全国規模の飼育頭数の調査は行われていないので、平成17年からの新潟市での飼育頭数で比較検討する。平成16年に高病原性鳥インフルエンザが発生、平成17年、新潟市の小学校114校、98%で動物が飼育されていたが、平成28年は73校、66・9%に減少した。286羽いたニワトリもわずか9%、26羽に減少した。
新学習指導要領解説生活科編では、「動物の飼育に当たって、管理や繁殖、施設の環境などについて配慮する必要があり、専門的な知識を持った地域の専門家や獣医師など多くの支援者と連携して、よりよい体験を与える環境を整える必要がある」と書かれている。
子供たちの健康は学校保健法により、医師、歯科医師、薬剤師によって守られている。動物の健康については、特別な規定はない。毎年学級担任が変わり、不特定の初心者による経験・知識不足な指導、予算不足、不衛生な環境などにより動物の感染症だけでなく、人と動物の共通感染症の観点からも、子供たちへの悪影響は免れられない。学校で安定的に動物飼育を行うには、保護者等社会の理解を得る必要がある。そのため、学校、教育委員会、保護者会、医師会、獣医師会等で構成される協議会を設置することが不可欠だ。
学校で新たに動物を導入する場合、その確保が問題になっている。飼育動物の減少によって学校間での譲渡も減少・皆無となってきている。ペットショップからの購入も多いが、購入時に病気に感染しているケースも散見される。最も安全と思われるのは獣医師を介してSPF(特定の病原微生物がいない)モルモットを購入することだ。
学校で子供たちに話をする時、世話の仕方、抱き方、ケージの掃除の仕方など細かく教えてきた。だが、学習指導要領の柱と言われる「主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)」によって対応が随分変わってきた。最近は全部応えず、丸投げもせず、気付きを尊重し、考えさせ、発言させるという方向になってきている。
生物介在教育は飼育活動を通じた気付きの中から、地球温暖化など環境問題に関心を持つことや生命の大切さ、人と動物の共存が実現できる環境整備などを通じて生きる力を育むことにつながる。獣医師は学校現場と連携しながら子供たちのためになる飼育を実現するためのお手伝いに尽力したい。