内向き克服し海外へトビタテ!
留学イベントに47大学―早大キャンパス
数は多いが枠は小さい奨学金
若い世代の「内向き志向」を克服し、グローバルな舞台に積極的に挑戦し活躍できる人材の育成を図ろうと、文科省は2020年留学倍増を打ち出した。早稲田大学キャンパスで全国47大学が参加し行われた留学推進イベント「Go Global Japan Expo」。留学への機運を盛り上げた。(横田 翠)
12月15日、国民的アイドル・AKB48が留学応援ソング「トビタテ! フォーチュンクッキー」を初披露、下村博文・文部科学大臣とのトークに大隈講堂が沸いた。
この「トビタテ! 留学Japan」プロジェクトは、文科省がグローバル人材育成推進事業として、東京オリンピックまでに大学留学を6万人から12万人、高校生の海外留学を3万人から6万人に倍増させようと、大学と連携して推進しているもの。
下村大臣はスピーチで、「OECD国際学力調査2012年で日本が加盟国34カ国中で1位というすばらしい結果にもかかわらず、意識調査をみると日本の若者は83・6%が『自分を駄目な人間』と考え、他国と比べて自己肯定感が極端に低い。日本の若者は自分の力に気づいていないのではないか。留学は自分の潜在的な力に気づく良いチャンス。Expoをきっかけに世界に飛び立つ若者がさらに増えることを期待している」と述べた。
2012年、海外留学した日本人学生の数は5万8千人。最多だった2004年から3割も減少した。特に米国への留学は激減している。これを7年以内に倍増する計画だが、志だけでは留学は実現しない。資金面でも国の支援が必要だ。さらに留学後の受け入れ環境の整備など、多面的な支援体制が求められる。
「Expo」では、日本学生支援機構(JASSO)はじめ47大学がブースを設けて、留学志望者や保護者に留学の手続き、奨学金制度など具体的な情報提供や留学体験者との交流会を行った。
JASSOがまとめた海外留学奨学金の一覧にはJASSO奨学金のほかに、19の地方自治体、54の外国政府、58の民間団体が留学奨学金支援を行っている。ただ、数は多いが募集枠は小さい。
文科省は今年9月、留学促進のため、無利子の貸与型奨学金を1万2千人に拡大すると発表した。
この日、基調講演に立った、ローソンCEOの新浪剛史氏は、大学時代にスタンフォード、就職後にハーバード留学の経験を交えながら、「自分の強みとなる得意なことや専門性を伸ばすとともに、自分を伝え、相手を理解するコミュニケーション能力を高めることが重要。両方を伸ばしていくことが真のグローバル人材につながる」と語り、「留学プログラムが用意されているなら利用しない手はない」と若者にエールを送った。
ただ、英語を目的とするなら、わざわざ留学しなくても英語を十分習得できる国内環境が整っている。秋田の国際教養大学や立命館アジア太平洋大学は留学生比率が高く、英語で授業を行っている。
学生たちはグローバル人材としての海外留学をどう考えているのか。高校生と大学生、専門家を交えての討論会では、グローバル化、グローバル人材の意味を巡って議論が白熱した。
日本の文化が大好きという埼玉県立高校2年の三本松眞さんは「留学し、英語ができればグローバル人材なのか?」と疑問符を投げ掛けた。
在米35年、カリフォルニア大学サンディエゴ校で教える當作靖彦教授は「グローバル化は国内でも起こっていること。グローバル化社会は、人間として多様な人とつながっていく、多様性の力が求められる」とコメントした。
留学経験者からは「海外に行ったことで、日本人としての誇りを持てるようになった」「日本の歴史・文化により関心を持つようになった」という感想も多かった。
文科省はグローバル化に対応し、5・6年生の英語を教科化、中学では英語の授業を英語で行うなど、英語教育の拡充を打ち出した。そのためには英語教師の確保が急務。平成26年度予算では、海外留学支援関連予算に前年比93億円増の145億円を計上している。まずはオリンピックに向けて英語を話せる人材を増やしたいという意気込みが伝わってくる。
だが、英語教育だけで複雑化するグローバル社会に対応できるとはいえない。當作氏が「世界の9割の人は英語を知らない。英語偏重では日本は世界で生き残れない。英語以外の言語にも力を入れる。多様な人材の育成が必要だ」と語っていたのが印象的だ。
留学は自分の夢や目的を実現するひとつの手段にすぎない。何の為に留学するのか。世界に出て何をしたいのか。留学を考える学生には、自分を見つめ直す場となったかもしれない。