「活用力を高める読解法の研究」をテーマに発表会
全国小学校国語教育研究所が主催
全国小学校国語教育研究所主催の「活用力を高める読解法の研究」を主題とした発表会が、このほど、東京都中野区の区立教育センターにおいて、開かれた。同研究所は全国国語教育研究会の付属機関として、教職員の退職者などによって構成され、学習指導要領の趣旨に沿って、現場で生かせる研究発表・講演を開いている。研究発表では同研究所の榊原良子氏が「考えを深める力・深め合う力をはぐくむ授業づくり」と題して研究発表、また、文部科学省初等中等教育局教育課程教科調査官の菊池英慈氏が「育成すべき資質・能力を明確にした国語授業づくり」と題して講演を行った。(太田和宏)
国語教育研究所員 榊原良子氏
求められる読解力・対話力を育成
榊原氏は研究主題設定の理由について、28年度全国学力・学習状況調査などによると「目的に応じて文章の内容を理解し、そして、自分の考えを明確にしながら読む」ことに課題があることが指摘されている。また、次期学習指導要領では学習の基盤となる文章構造と内容を理解し、それを基に自分の考えを持ち、友達と言葉を通した交流・協働活動や教師の指導・助言により、集団の中で考えを共有する力を育てたい、ということから決まったことを示した。
読解力に対する資質・能力の中核となるのが、図のように、創造的・論理的思考の側面ではこれまで以上に思考力を高めることが求められている。感性・情緒の側面では感情や想像を言葉にする力を求められている。他者とのコミュニケーションの側面では、言葉を通じて伝え合う力など対話力を育成していくことが求められている。それぞれが単独で成長するものではなく、有機的に関連付け、有機的に機能させていかなければならない。それによって、考えを深める力、深め合う力、考えを共有する力が付いていく。
これからの情報化社会の中で求められる資質・能力として、収集した情報と情報の関連性と吟味。分析、理論の構築というものが必要となってくる。無目的に読んで、感じて、というのではなく、児童・生徒に課題意識を持たせ、説明文章や文学的文章において、複数の場面や登場人物の行動を比較検討し、自分の考えを持たせ、小集団で意見交換し、クラス全体の意見交換する中で自分の考えを深め、新たな気付きを持たせ、自分にフィードバックさせて、自分の考えを構築させる。
さらに、身に付いた知識・考えを用いて、課題解決へと導けるようにする。また、一方的に教師が進めていくのではなく、時には立ち止まり、時には振り返り、児童・生徒の考えを主に置き、授業を進めていく必要がある。
次期学習指導要領で新しく出てくる「考えの共有」は、これでの発表(一方通行的)・話し合いというところで止まっていたものが、一歩進んだものとなっている。互いの考えを認めたり、比較し合うことで、自分の考えを広げていくこと。「対話的な学び」を進めていくことになる。
文部科学省初等中等教育局調査官 菊池英慈氏
思考力・判断力・表現力を養う
今回改定される学習指導要領は小学校で来年度から移行期間に、中学校で31年度から移行期間に、32年度から全面実施される。移行期間においては、継続性が失われないよう、段階的に進められ、現場の判断で全部または一部を指導していくことになる。
改定の前提になる国語科の課題として挙げられるのが経済協力開発機構(OECD)が2015年に実施した、国際学習到達度調査(PISA)の結果だ。複数の情報や資料を比較検討し、自分の考えをまとめ、答えを導くという思考重視の問題に対応できていない。また、回答が筆記ではなく、パソコンなどを使って、入力する形式に日本の児童・生徒は慣れていないことが成績の不振につながっている。
具体的な改善内容として教科の目標の改善を挙げている。言葉による見方・考え方を働かせ、言語活動を通して、国語で正確に理解し、適切に表現する資質能力を育成する三つのことを目指している。
①知識および能力について、日常生活に必要な国語について、その特質を理解し適切に使うことができるようにする②思考力、判断力、表現力等として日常生活における人との関わりの中で伝え合う力を高め、思考力や想像力を養う③学びに向かう力、人間性等として言葉の持つ良さを認識するとともに、言語感覚を養い、国語の大切さを自覚し、国語を尊重してその能力の向上を図る態度を養う――としている。
最後にまとめとして菊池氏は、「なぜ授業改革が必要なのか。その答えは、目の前の子供たちの中にある。一人一人の内なる声に耳を傾け、つまずいている、苦しみに寄り添いたい。そこから授業改善は始まる。物語を説明文を読むって、楽しい。みんなで意見を出し合うって、いろいろな発見があって面白い。こんな書き方をすると、分かりやすいんだ。そんな学級にしたいものである。変化の激しい未来社会を生きる子供たちにとって、必要な国語能力を確実に身に付けさせていきたいものである」と現場に携わる教育関係者にエールを送った。