英語が話せても国際人とはいえない

「東京都教育の日」で宮崎緑氏講演

 東京都は子供たちの教育について都民全体で推進し、教育の充実と発展を図るため、「東京都教育の日」記念行事(毎年11月の第1土曜日)を都庁で開催した。今年は、「オリンピック・パラリンピック教育の推進~異文化の尊重と豊かな国際感覚の醸成~」をテーマに、小・中・高等学校、特別支援学校の児童・生徒による国際教育の取り組みについての発表のほか、東京都教育委員会の宮崎緑委員(千葉商科大学教授・国際教養学部長)による講演を行った。

異なる文化・価値観を理解し自分の軸を持って語ること

英語が話せても国際人とはいえない

講演する宮崎緑氏

 ムハンマドの風刺画問題に端を発して、2005年から翌年にかけ、ヨーロッパでテロ事件に発展した。イスラム教徒は偶像崇拝を忌み嫌い、ムハンマドを描くこと自体、不敬・冒涜(ぼうとく)になると考えている。また、ダビンチ・コードではイエス・キリストが実は結婚していて、子供もいたというエンターテインメント性のある映画だった。キリスト教徒は世界で本の出版停止と上映禁止を打ち出した。

 ユネスコ(国連教育科学文化機関)が表現の自由と宗教的シンボルについて「表現の自由の尊重及び信仰、宗教的価値及び宗教的・文化的シンボルの尊重」という決議案を発表した。表現の自由というのは、相手を尊重して初めて成り立つ。宮崎氏は「何でも言いたいことを言えばいい、というものではない。自分たちと考えが違ったとしても、尊重すべきである。決議をしなければならない」と言う。

 3年前に設立した千葉商科大学の国際教養学部・学部長として宮崎氏は、入学式の、その日に学生にパスポートを持参させ、海外研修を行っている。海外の提携大学の学生たちと、グループを組ませ、班ごとに、コミュニケーションを学習させた。

 1期生は日中関係が冷え切った時期に上海に連れて行った。学生たちは「メディアの情報を鵜呑(うの)みにしてはいけない。自分の目と耳で感じたことで判断しなければならない」と語っていた。2期生はベトナムを訪問。ベトコンのゲリラが敷設した地下トンネル都市、を体験して戦争を実感することを目的にし、学生たちは深刻に受け止めていた。3期生は今年、台湾に連れて行った。二つの中国を体感させたかった。来年は多民族が共存、複合的に文化が共存するマレーシアを考えている。

 宮崎氏は「英語が話せて、国際会議に参加したら、国際人、という訳ではない。異なる価値観をいかに理解するのか。自分の軸を持っていないと、国際社会では相手にしてもらえない」「グローバルな人材育成に語学力の養成はもちろん、留学経験で満たされる積極的な柔軟性、幅広い教養を身に付けてほしい」と語り、深い人間性の育成に取り組んでいる。