ネットトラブルから子供を守ろう

秋田市では父母や教育関係者らが協議会を設置

 「中学校の生徒がツイッターで友人を誹謗中傷しています」「LINEに掲載していた画像を勝手にダウンロードされ、ばらまかれて困っています」――近年インターネット関係のトラブルが小中高生の間で増えている。秋田市ではPTA、校長、教育委員会などが一体となって未然防止・対策に取り組んでおり、家庭での対応のほか、早めの相談窓口の利用を呼び掛けている。(伊藤志郎)

誹謗中傷やLINE外し/早めの相談窓口活用呼び掛け

ネットトラブルから子供を守ろう

8月29日に秋田市文化会館で開かれた「子どものネットトラブル防止講演会」

 8月29日、秋田市教育委員会と秋田市PTA連合会が連携し、子供のネットトラブル防止の講演会を秋田市文化会館で開いた。違法・有害情報相談センター(総務省支援)の桑子博行センター長は「今の子供は、生まれたときからケータイ・ゲーム・ネットに囲まれて育ち、それらを使うのが『当然』と考えているデジタルネイティブの世代。『使うな』と言っても無理。ネットトラブルの被害者にも加害者にもしないことが大切です」と、父母や学校関係者に語り掛けた。

 秋田県教育委員会によると、県内の児童生徒の通信機器利用状況(平成26年10月発表)は、携帯電話が小5約19%、中1約13%、中3約14%だった。一方、スマートフォンは小5約6%、中1約18%、中3約32%と、学年が上がるにしたがい高くなっている。逆にゲーム機など通信機能付き端末は小5約80%から中3約47%へと所持率は減少した。

 秋田市教委によるインターネット利用等に関する調査(同年11月発表)によると、平日の利用時間は、小5は1日1時間以内が約62%、1~2時間が約27%、3時間以上が3%。高学年になるにつれて利用時間は長くなり、中3では1時間以内が約46%で、3時間以上が6・5%と増えた。

 市教委が同時に行った意識調査では、LINEやメールなどの利用のしすぎで睡眠時間が減った(中1約8%、中3約15%)、学習時間が減った(中1約15%、中3約20%)と、高学年ほど悪影響を自覚していた。

 そして、LINEやメールなどで疲れたり、利用をやめたいと思ったことのある子供は中17%、中2約12%、中3約15%と、これも学年が上がるにつれ増えている。

 厚生労働省の調査では、携帯電話やパソコンに没頭する「インターネット依存」の中高生は全国で推計51万人にのぼる。

 このような状況に対し、秋田市PTA連合会、秋田市小・中学校長会、市教委の三者はネットトラブルの未然防止に向けた協議会を設置し、防止のための取り組みなどを書いたパンフレットを児童生徒を通じて全家庭に配布した。

 また、25年度から中学校24校の代表が集って中学生サミットを開き、いじめ防止に向けた活動に取り組んでいるほか、ある中学校では学校祭でLINEトラブルをテーマとした寸劇を行い全校生徒にいじめ防止を訴えている。

 ネットトラブルの事例は多岐にわたる。秋田市内では(1)学校内の人間関係のトラブルがもとで、ネット上に誹謗中傷する内容を書き込まれた、(2)自分だけがはずされて新たなLINEのグループが作られる、いわゆる「LINEはずし」にあった、(3)無料でネットに接続できる場所に集まりゲーム機で有料サイトを利用した結果、高額な料金を請求された、などがあった。

 警視庁「サイバー犯罪対策協議会」の副会長も務めている桑子氏は、ツイッターやユーチューブ、LINEなどでは一度拡散した情報の削除は難しいことが多く、トラブルは収束しにくいと指摘する。

 市教委では保護者に対し「スマートフォンやインターネットに接続できるゲーム機・音楽プレーヤーなどを買い与える場合は、親子のルールを作り、文章化し、守ることを約束させる。フィルタリングを必ず利用してほしい」と呼び掛けている。また、子供が困っていたらすぐに相談にのり、必要があれば学校に連絡してほしいという。

 親子のルールとしては「平日は1時間、休日は2時間以内」「勉強中は電源を切る」「食事中や歩きながらの『ながらスマホ』はしない」「自分の部屋では使わない」などをあげ、ルールを守れなかった時の約束も決める、としている。

 いじめ防止も含めて、相談できる機関は多い。秋田市では、教育委員会学校教育課、教育研究所、子ども未来センター、少年指導センター「わかくさ相談電話」、秋田地方法務局「子どもの人権110番」などがある。市教委は、子供がトラブルにあったときは早めの相談をと呼び掛けている。