「言葉の壁」越える若者たち 日台友好の輪を広げる
札幌で台湾華語スピーチコンテスト
ここ数年、台湾から日本を訪れる観光客が増えている。とりわけ、北海道は人気の的で、来道する台湾人観光客の数はうなぎ上り。それに伴い、日本と台湾でスポーツや教育分野で相互訪問するケースも拡大傾向にある。ただ、問題は言葉の壁。そこで札幌市内に事務所を構える台北駐日経済文化代表処札幌分処はこのほど、「台湾華語スピーチコンテスト」を開催。北海道の若者たちが台湾華語で台湾に対する思いを披露した。(札幌支局・湯朝 肇)
「優勝できるなんて信じられません。でもすごく嬉(うれ)しいです」
7月29日、札幌市内で開かれた「台湾華語スピーチコンテスト」で優勝した山田彩乃さん(19)はこう語ってその喜びを表現した。
今回のスピーチコンテストの課題は「台湾と私」「私が思う台湾」「私が台湾に伝えたいこと」の三つ。山田さんは「私が思う台湾」をテーマに、昨年、自身が体験した台湾旅行での内容をスピーチし、見事優勝を勝ち取った。
山田さんが台湾の言葉を勉強し始めたのは大学一年生の時。「札幌での大学生活では明確な目標もなく、ただ毎日を過ごしていました。そんな時、友人と台湾に行く機会がありました。そこで台湾の人たちの優しさや人情に感動し、もっと台湾のことを知りたいと思うようになったのが勉強を始めたきっかけです」と語る。
札幌に帰ってからも台湾への思いは募るばかりで、通っていた大学を中退して昨年12月に台湾の大学語学学校に入学し、台湾語を習得していった。すでに、来期の台湾の大学入学も決め、「将来は台湾の企業に就職し、国際的な分野での仕事がしたい」との抱負を語る。
山田さんには、賞状とともにトランスアジア航空から台北-新千歳往復ペア航空券が贈られた。
この日のスピーチコンテストの発表者は男性4人、女性12人の合計16人。札幌とその近郊に在住する学生や社会人で、ほとんど若い人たちの参加だった。各自5分間の持ち時間を流暢(りゅうちょう)な台湾華語で話を進めていく。
審査員長の柿澤未知・北海道大学公共政策学連携研究部公共政策学研究センター准教授は「審査の基準は、しっかりとプレゼンテーションできているか、また大陸の中国語と違う台湾華語をしっかりと捉えて話すことができるか、また感動させる内容か、という点において審査したが、発表者は皆、甲乙つけがたいほどの出来だった」と総評する。
「台湾華語スピーチコンテスト」は今回が第1回。開催の趣旨について主催者である台北駐日経済文化代表処札幌分処の陳桎宏処長は「札幌分処が開設されて今年で6年目。この間、台湾から北海道を訪れる観光客は20万人から40万人以上に増えました。さらに増加していくことは確実で、自ずと交流は進んでいくでしょう」。
こう前置きした上で、「そうは言っても真の台湾と北海道の交流は単に観光客の増加で計るのではなく、両国の歴史や文化などを基盤に互いにどれだけ理解し合えることができたかが大事。そのためにはまず言葉の壁を乗り越えることが課題。とくに若い人に台湾の言葉を知ってもらいたい。そんな願いをかねてから持っており、今回のスピーチコンテストを企画しました」と強調する。
札幌分処の開設は台湾からの観光客のケアだけでなく、北海道と台湾の民間交流に大きな力を発揮し、これまでにも各地でスポーツや教育関係で相互訪問が実現している。また、企業活動においても貿易拡大や企業連携の輪を広げている。
日本と台湾の関係がさらに深化する上からも、日本の青年が台湾に興味を持つ意義は大きい。陳処長は来年もまた今年以上の規模を目指して「台湾華語スピーチコンテスト」を開催すると意欲を燃やしている。