秋田県立美術館がアートスクール 多彩な内容に多くのリピーター

 秋田県立美術館(秋田市)がアートスクールを定期的に開催している。平成26年(2014年)度は5回開いた。秋田県出身の幕内力士・豪風のデッサンや粘土での表現、電気スタンド制作など各回とも多彩な内容だ。募集人数は小学生以上一般の20人だが、リピーターも多い。アートスクール「ぼくの森わたしの森」を取材した。(伊藤志郎)

森のコラージュ作りなど人気

多彩な内容に多くのリピーター

色紙の切り方などをアドバイスする浅野壽里さん

 講師は、ヨーロッパで長期滞在制作を経て、能代市で美術英語教室「森のおと」主宰のアーティスト浅野壽(じゅり)里さんだ。

 テーマは「心に描いた森のイメージ」で、10色の色紙を切り貼りしながら森のコラージュを作る。

 浅野さんの導入部分がユニークだ。まず、呼吸法から。体を伸ばし、首を回すなど体を柔らかくした後で、優しく呼びかける。

 「手で花を作ります。お気に入りの色で。匂いをイメージして、吸って、吐いて」と一連の呼吸法が続く。

 その後、参加者は目を閉じ、浅野さんが語る森の物語の世界に誘われてゆく。ゆったりとした音楽が流れるなか、太陽の光、広がる森、花、若芽、大きな一本の大木、ちくちくした木の肌…。やがて眠りに落ち、目覚めて森を出る、とのストーリー展開だ。参加者は自分が主人公になって森の中を過ごしてゆくよう。その感覚を画用紙に貼り絵として表現する。

多彩な内容に多くのリピーター

パステルを塗った画用紙に貼り絵をする参加者=秋田県立美術館レクチャールーム

 配られた黄緑と緑のパステルを使い参加者は手のひら全体で画用紙一杯に色を薄く伸ばしていく。「画用紙に塗りこんでいくみたいに。周囲に白いところがないように」とアドバイス。

 それが終わると、水で手を洗い、今度は10色の紙が配られた。ハサミを使い、たくさんの森のパーツを作る作業に。「じゃばらにして切っていくと、同じパーツがいくつもできます」との浅野さんのアドバイスで、参加者は思い思いに作業を進める。木、葉、花びらなどができていく。

 「大きさに変化をつけると、スケール感が出てきますよ。大、中、小、すごく小さいのとか」とのヒントを受け、ハサミがまた動き出す。

 完成まで2時間しかないのだが、進み具合はさまざま。「そろそろパステルを塗った紙にパーツを配置してみます。すると足りないパーツが見えてきます」と浅野さん。

 この日は、募集定員20人に対し29人が参加。他に付き添いのお母さんらが7人いて、ときどき助け船を出していた。

 「真ん中だけでなく、四隅も忘れないでちゃんと描いて下さい」との呼び掛けが終わると、今度は糊(のり)付けが始まった。

 赤い太陽のもと、「森で食べ物を探しているクマサン」を貼る小1の男児。「想像して作り上げて、気持ちよくできました」とは、制作に携わったお母さん。

 息子とその友人と一緒に参加した40代の父親は「久しぶりに集中して、熱くなりました。直線を組み合わせて森を表現しようとしました」と興奮気味に語る。

 その後、黒い台紙に貼って完成となるのだが、多くの参加者は時間切れでまだまだ物足りない様子。「切った後の紙を持ち帰って、お家で完成させてください」となって解散した。

 主催した秋田県教育庁生涯学習課の林栄美子さんは「気軽に美術館に来て楽しんでもらえるように開いています」と語る。

 アートスクールは、24年7月の同館暫定オープン(建物のみ公開)から開始。25年9月の本オープン後も年間5~6回開いている。

 基本的に定員は20人(先着順)、受講料無料(材料費負担の場合も)だが、24年9月に秋田県出身の力士・豪風をボールペン1本でデッサンしたときは小学生からおじいちゃんまで30人が参加。それでも入れ切れないギャラリーはガラス越しに見詰めるほどの人気だった。他に、見えないもの(孤独、愛情など)を粘土で表現する、竹ひごと紙で電気スタンドを作るなどユニークな催しをしている。