復興を担う若い人材を育成 新設の福島県立「ふたば未来学園高」開校

 東京電力福島第1原発事故で住民の6割以上が避難したままの福島県広野町で今月8日、中高一貫校の県立「ふたば未来学園高校」(丹野純一校長)が開校した。双葉郡(8町村)の高校では、今年度唯一の生徒募集だ。県内で初めて文部科学省のスーパーグローバルハイスクール(SGH)の指定を受け、独自の教育プログラムを繰り広げる。(市原幸彦)

俳優・西田敏行さんら 目玉事業の特別授業で応援

新設の福島県立「ふたば未来学園高」開校

ふたば未来学園高校の開校式と入学式。紺のブレザーに身を包んだ152人全員が出席した=8日、福島県広野町

 同校は、国の財政支援を受けながら国際的な視野を持ち、復興の現状を世界に発信し、活躍できる人材の育成に取り組む。学区は県内全域。1学年の定員は120人だが、152人(男子98人、女子54人)が1期生として入学した。「希望者が多かったので、特例として全員合格させました」と、県高校教育課の加藤知道主幹は説明する。

 双葉郡の県立5高校はサテライト校として県内各地8校に分散していた。新入生のうち97人が地元の双葉郡出身で、ほとんどが避難生活中だ。通学圏外の60人余は新設の寄宿舎から通う。新校舎が完成する平成31年春まで、臨時校舎の町立広野中学校で学ぶ。中学部も31年度からの開始を予定している。

 箱崎兼一教頭は「さまざまな個性をもった生徒たちが集まりました。生徒も教職員も手探り状態ですが、双葉郡と福島県の復興と課題解決に寄与していきたいという一点は共有し、一つになっていると感じます」と語る。

 全日制で総合学科。5校の特徴を引き継ぎ、アカデミック系列、トップアスリート系列、スペシャリスト系列の幅広い科目群がある。アカデミック系列は、大学など上級学校に進学するための主要5教科を学ぶ。スペシャリスト系列は、農業の生産・加工・環境に関する科目、工業・商業の基礎、福祉の資格取得につながる科目を学ぶ。

 トップアスリート系列では、サッカー・ゴルフ・バドミントン・野球・レスリングの5競技で高度な実技や理論について学ぶ。日本サッカー協会・JFAアカデミーの育成プログラムにのる18人の生徒たちは静岡県三島市の校舎で、県のバドミントンのビクトリープログラムにのる9人が猪苗代町の校舎で学んでいる。

 もう一つの特徴は学校必修科目「学びの設計」。1年次の「産業社会と人間」で、自分の将来や進路について理解を深め、履修計画を作成したりする。2・3年次の「学校設定科目」(2年次のみ)と「総合的な学習の時間」では、自分の将来へ向けた課題について継続的に調査・研究していく。

 各界著名人が特別授業で講師を務める「ふたばの教育復興応援団」は同校の目玉事業だ。「前例なき環境には前例なき教育を」を掲げて、開校や授業に協力するため26年7月に各界の有志が結成した。授業や部活動等への協力、校歌や制服の作成など同校の立ち上げへ協力した。このほか、在校生が地域の人々との絆を深めるイベント等も支援していく。

 メンバーは宇宙飛行士の山崎直子さんや建築家の安藤忠雄さん、バドミントンの潮田玲子さん、俳優の西田敏行さん、小泉進次郎復興政務官ら17人。

 8日に行われた開校式・入学式で、小泉氏は「双葉郡の子供たちは多感な時期に世界でも例のない経験をした。その経験を力に変えられるように全力で支援する」と決意を示した。

 あわせて県内で初めて高校部に「副校長」制度を導入した。初代副校長には、開校の準備に携わった文部科学省初等中等教育企画課専門職の南郷市兵氏(36)が就いた。応援団や文科省、復興庁、県教委、8町村との連携に取り組む。

 加藤主幹は「華々しくスタートしましたが、今後、教育内容をどれだけ充実させていくかが課題。いろんな方々の思いがつまった学校なので、そういう思いを受けて福島県の復興を支える人材を育成できるような学校になってほしい」と語る。

 また、箱崎教頭は「入学式で校長は『変革者たれ』と言われた。自己実現を図り、自分を変え社会を変えていくという建学の精神のもと、新しい学校づくりを通して広く地域社会や世界に貢献する人材に育ってほしい。教職員も一丸となって頑張っていきたい」と意欲をみせている。