中学教科書 社会科全てに「竹島・尖閣」
検定基準、解説書見直しで
文部科学省は6日、2016年度から中学生が使用する教科書の検定結果を公表した。歴史や領土問題について政府の統一見解を反映させるよう求めた新たな検定基準が初適用された。竹島と尖閣諸島については学習指導要領の解説書に盛り込まれたため、初めて社会科の全ての教科書に関連する記述が載った。
分量さらに増加・中学教科書
「脱ゆとり」と呼ばれる新学習指導要領になって2度目の検定で、ページ数は全教科でさらに増え、平成に入って最多。東日本大震災や東京電力福島第1原発事故について詳述したほか、20年の東京五輪・パラリンピックやインターネット交流サイト(SNS)を取り上げた教科書も多かった。
申請があった104点中102点が合格。社会の歴史的分野で、2社の2点が不正確な記述や内容の偏りを理由に不合格とされ、再申請後の再検定で合格した。
14年1月改定の検定基準は、領土や歴史などで異なる見解がある事象については、通説がないことや政府の統一見解を明記するよう規定。これに基づく検定意見は6件で、戦後処理や「植民地支配と侵略」を謝罪した村山談話に触れた教科書の記述に、「政府は国家間の賠償などの問題はすでに解決済みという立場をとってきています」の一文が追加されるなどした。
現行の社会の教科書18点中、竹島に触れているのは11点、尖閣諸島は9点だが、今回の申請では18点全てが両方を掲載。歴史的経緯を説明したり現在の情勢に触れたりし、記述の分量も倍増した。
東日本大震災後、中学教科書は初の検定で、さまざまな教科で大きく取り上げられた。関連記述を載せた教科書は58点で、うち35点は福島第1原発事故も記述。放射線についても理科などで詳しく説明した。
平均ページ数の全教科の合計は5877ページで前回の10年度より約350ページ、6・5%増加。「ゆとり教育」だった04年度からは33%増えた。体裁を大判にし、写真や図表を多用した教科書が多く、指導要領にない「発展的内容」もより多くなった。
また、昨年不合格だった高校英語の1点も内容を見直し合格した。
ほぼ文科省案通り
1冊平均40件の検定意見
今回の検定で、有識者から成る教科用図書検定調査審議会が付けた検定意見は4469件。現行の学習指導要領になって2度目の検定だったこともあり、前回より36%減少した。
合格図書の申請1点当たりの平均は約43件。文部科学省の教科書調査官の原案の97%がそのまま受け入れられ、521件が追加、69件が変更された。改定基準に基づく検定意見は6件だった。
(時事)