琉球大学が沖縄県の学力向上を支援

沖縄・浦添市でシンポ、成果を披露

 沖縄県の公教育における学力向上を考えるフォーラム「うちな~版学力向上への道」(琉球大学教育学部主催)がこのほど、浦添市で開かれた。琉球大学(以下、琉大)教育学部は2013年度から県からの委託で「学力向上先進地域育成事業」を実施している。フォーラムでは事業に参加している学校がこれまでの学習成果を披露。学校、家庭、行政に加えて大学などの研究機関が一体となって学力向上に取り組むことの重要性を確認した。(那覇支局・豊田 剛)

理論を教育現場に提供/教員が指定小中で研修の助言

琉球大学が沖縄県の学力向上を支援

「うちな~版学力向上への道」におけるパネルディスカッション=浦添市のてだこホール

 学力向上先進地域育成事業の趣旨は次の通りだ。

 「児童生徒の『確かな学力』の向上を図るため、県内大学の研究成果及び人的資源を県内指定地域の小中学校において計画的に活用することによって、授業の工夫改善と学習環境の充実を図る学びのシステムを構築し、先進的な学力向上推進地域を育成することを目的とする」

 沖縄本島中部の沖縄市、浦添市、宜野湾市、中城村からそれぞれ一つの校区が選定され、平成26年度から事業に取り組んでいる。具体的な取り組みとしては、①琉大教員による校内研修の助言②琉大学生による学習支援ボランティア③参観日などを利用した琉大教員による講演―が挙げられる。

 琉大教育学部の萩野敦子教授によると、現場の教師から最も依頼が多いのが、国語学習支援だという。昨年末時点で延べ270人の大学生が参加した。

 フォーラムでは、主催者を代表して小田切忠人学部長が教育の基本姿勢について語った。小田切学長は「教育の大前提は子供が勉強したいと思うこと」で、そのためには「大人が口で言うのではなく頑張っている姿を見せる、未来を展望することが大切だ」と話した。

 さらに、「先生が子供たちに好かれることは教える技術よりも大事なことだ」と指摘。理論が当てはまらない目に見えない発達段階にある子供に真摯に向き合うのが大事だと持論を述べた。

 学力向上の取り組みについて報告した宜野湾市立普天間第二小学校は①「教師が授業で勝負する、教室で子供を変える」という授業力の向上②「させっぱなしにしない」後処理の徹底③家庭学習の強化④放課後や夏休みにおける補講――などを徹底した結果、全国学力テストが県内上位になり、無回答率が全国の半分になったという。

 一方で、国語力に課題があることから、今年度は琉大に協力を依頼し、「対話を重視し、主体的に思考・判断できることを目指す授業」を実施している。

 中城村立中城南小は、教師が①「言葉掛けはどうだったか」「考える視点の提示はどうだったか」を思考整理②課題や分からないことを仲間と話し合う③授業を振り返り、ポイントをまとめる――などの授業リフレクション(省察)を徹底することで、授業の質が向上したという。

 こうした報告を受け、前出の荻野教授は、今後も小中学と連携していく意向を示す一方で、「永続的な仕組みづくりが必要だ」と述べた。事業の成果としては、大学の活用が活性化し、連携地域が拡大したことを指摘。さらに、大学だからこそできることの活用不足、教育学部のマンパワー不足を課題に挙げた。

 県教育庁義務教育課学力向上推進室の田港朝満主任指導主事は「大学は研究によって得られた理論を現場(小中学校)に提供することができ、現場は大学に研究の実践の場を与えることができる」ウィン・ウィンの関係として事業の意義を強調した。その上で、これまで「どうせ沖縄の学力は低いというあきらめムードがあったが、地域をリードする学校が出ることで、『一点突破』を期待できる」と述べた。

 公開討議では「学力向上のために次にやるべきことは何か」をテーマに話し合われた。普天間第二小の川村和久校長は、5、6年生は児童と先生が一緒になって進級する「持ち上がり制」を導入することの成果を報告。「じっくりと教えることができ、不登校児童がゼロになり、学力向上の成果があった」と述べた。

 県教育庁義務教育課学力向上推進室の宮國義人室長は、学力を高めることが必要な理由は「将来、日本はこの子供たちに支えられる」からだと説明。また、「成功体験をすれば子供たちは伸びる」と話し、褒めて伸ばすことの重要性を強調した。

 一方で、学校間の学力差が高いことから、事業成功例を全県的にどのように普及させるかが、今後の課題となっている。