生徒作品ブランド化し販売
青森第一高等養護学校キャリア教育
青森市の県立青森第一高等養護学校は今年、同校の知的障害のある生徒が作業学習で作る製品を学校独自にブランド化した。地域で活躍するデザイナーや陶芸家の参加協力を得ながら、作業学習の仕組みや製品の開発に取り組んでいる。(市原幸彦)
柿渋塗り文房具、小型ベンチなど/ものづくりの喜び伝える
ブランド名は「テイネイ」。丁寧なものづくりという意味が込められている。ものづくり教育を通して障害がある生徒の能力を引き出すとともに就業の気持ちを育て、仕事の喜びを味わってもらう。
牛乳パックを再利用した和紙に柿渋を塗って作った文房具、小型ベンチ、織物のバッグ、ランチョンマット、そして生徒が育てた大根や白菜もブランド商品だ。11月8日に学校祭で販売した。
担当の蒔苗(まきなえ)正樹教諭(53)は「メディアなどで広く紹介されたこともあり、たくさんの来場者がありました。製品も好評で売れ行きがよかった。生徒たちは意欲的に活動に参加でき、満足感も得られたようです。ブランド化することによって声をかけていただいたり、励ましの言葉をいただいたことはとても良い刺激になりました」と語る。
さらに「いい物を外に向かって作っていくという明確な目標ができましたし、作業に取り組む一生懸命な姿勢や、しっかり作ろうという態度が向上してきたと思います」と、手応えを感じている。
同校のブランドづくりは、県教委の「外部人材を加えたセンター的機能強化事業」の一環で、知的障害教育部の43人が取り組む(同校には他に肢体不自由教育部=33人がある)。ものづくり・作業学習の背景にあるのが、特別支援学校としてのキャリア教育だ。知的障害の場合、コミュニケーションが難しかったり、集団行動が苦手だったりする生徒がいる。障害の程度も違う。そんな生徒の将来の生活や就労について指導する。
「一生懸命に丁寧に作れば、作った商品の価値が上がり、商品を手にした人に喜んでもらえる。それが仕事をする自分の喜びにもつながり、製作意欲、社会参加への意欲の向上につながります」と蒔苗教諭。
今年5月ごろから外部のデザイナーらと、教員との間で議論を重ねてきた。デザインとはどういうものか、校内の教師が学ぶことから始まり、生徒による製品開発や技術面の検討などを進めてきた。
センター的機能ということで、市内の他の中学校、高校、事業所にもデザインの大切さなどを発信していこうと、シンポジウムを8月に開催。それをスタートラインとし、生徒がワクワクしながら主体的かつ意欲的に活動できる「ものづくり」をめざして「一高養ブランド創造プロジェクト」を立ち上げた。
そして①牛乳パックを再利用した和紙に柿渋を塗って作る文房具②玄関に置けるコンパクトなベンチ③織物のバッグとランチョンマット―の3種類を開発。生徒が育てている野菜もブランドの商品に加えた。
「特別支援学校の生徒が作ったということでなく、一般販売を前提に、デザイン的にも機能的にも十分耐えられるものを作ろうと進めてきた。他にないオリジナルなものができたと思います」と、蒔苗教諭は自信を示す。ブランド「テイネイ」には、同校の教育を県民に広く知ってもらうきっかけになってほしいとの期待も込められている。
12月中旬から2月にかけて県立美術館のミュージアムショップで製品を販売する。好調であれば継続販売の予定だ。蒔苗教諭は「本校の実態上、大量生産はできませんので、基本的には学校祭で。あとは外部の店やイベントなどに発信していきたい」という。生徒一人ひとりの自立や社会参加をめざして工夫しながら取り組む特色ある同校の教育活動。これもまた「一高養ブランド」と捉える。
今年度の学校経営方針の重点事項に「授業の充実」「キャリア教育の推進」「地域との連携強化」の3点を掲げた。生徒一人ひとりが分かり主体的に取り組む授業づくりを進める一方、保護者や地域に向けて、学校(学級)だよりやホームページなどを活用した情報発信、校内掲示の工夫にも取り組んでいる。
佐藤全克(まさかつ)校長は「学校全体としてはいろんな活動をブランドとして捉えながら、発信していきたい。保護者の方々をはじめ、地域の皆様と連携し、地域から愛され、支えられる学校づくりを進めたい」と話す。
ただ毎年、生徒が替わり、教員の転勤もある。蒔苗教諭は「今年できた成果やノウハウ、ベースになるコンセプトも含めて、どうきちんと引き継いでいくかが課題です。今年はプロの手を借りて製品開発もできた。事業は今年度までですが、蓄積したノウハウを次年度以降も生かしながら、子供たちの生きがいをつくっていけるような学校にしていきたい」と意欲をみせている。