毎月23日は「いしかわ学校読書の日」
全ての公立小中学校が独自の取り組み
石川県教育委員会は、毎月一回、「いしかわ学校読書の日」を設け、児童・生徒の読書活動の推進や充実に取り組んでいる。図書館の活用や家庭読書の奨励など、具体的な方法は各学校に任され、それぞれ独特の持ち味がある。読書離れが叫ばれて久しいが、こうした本に親しむための活動によって、読書を楽しむ子供が増えることが期待される。(日下一彦)
貸出数50冊以上の児童を表彰
「いしかわ学校読書の日」は毎月23日。県下全ての公立小中学校が一斉に実施している。年間を通した取り組みで、教師や図書館司書による読み聞かせや本の紹介、全校一斉の朝読書、家庭読書など、各学校がそれぞれ独自に行っている。
「読書の日」制定の狙いは各学校の読書活動を活性化し、児童・生徒に望ましい読書習慣の確立を図ることにあり、5年前に始まった。23日が休日の場合は、前日もしくは前々日に実施する。
金沢市西部の浅野川小学校では、朝「読書の時間」を全校で実施し、半期ごとに貸出数50冊以上の児童を表彰する。司書教諭も図書室の利用を積極的に呼び掛け、一人当たりの貸出冊数が平成24年度の34・9冊から翌年度は58・33冊と大幅に増えた。
能登半島の先端、珠洲市の大谷中学校は全校生徒19人の小さな学校だが、「5000ページ読書の旅」に取り組む。朝読書などで読んだ本のページを生徒ごとに棒グラフで表し、達成状況を掲示する。休み時間にも読書する姿が増え、年度末にはほとんどが目標に到達し、表彰を受けるという。
読書の機運を高めるため、図書室の本の紹介コーナーに「国際理解」「環境問題」などテーマを設けて本を展示。また、生徒や職員による「お薦めの本の紹介」、生徒による「私のお薦めの本1分間スピーチ」なども実施している。
能登半島の中ほどに位置する志賀(しか)町立富来(とぎ)中学校では、生徒や司書とともに保護者も「お薦めの一冊」に加わり、推薦本の感想を書いたカードを図書室前に掲示。金沢近郊のかほく市・河北台中学校は「お薦めの本」の冊子を作り、どんな本を読んだらいいか迷っている生徒にとって、本選びの参考になっている。
金沢市の西南部小学校では、朝学習の時間に読書を週に2回、月曜日と木曜日に取り入れ、第2、第3木曜日には図書ボランティアが子供たちに本を読み聞かせている。
家族読書・親子読書も大切だ。同小では毎月3回ある「テレビ・ゲーム『0』の日」のうち、20日を「親子の読書の日」と決めた。子供の感想をみると、「お母さんに本を読んでもらうのは小さい頃以来なので、とても楽しい時間だった。親子で本を読むのはいいものだなあと思った」。親からは「何年かぶりで読み聞かせして、とても懐かしかった。本棚で眠ったままの本をたまには一緒に読んで過ごすのも、とても良いコミュニケーションになった」との感想も寄せられている。他にも「子供の成長を感じた」「家族で読書という同じ時間を共有出来て良かった」との声も。
金沢市のPTA協議会では、読書を通して親子の絆を深めてもらおうと、5年前、小学校の全保護者向けに「親子で読んでみまっし」という冊子を作った。子供たちに読ませたい絵本と読み物を保護者にアンケートし、それぞれ100冊ずつ選んでいる。
絵本では「ぐりとぐらシリーズ」や「どろんこハリーシリーズ」「ピーターラビット」など、人気のタイトルがリストアップされた。読み物では「赤毛のアン」「ハリーポッターシリーズ」「オズの魔法使い」などが入っている。翌年には中学校版も作った。こちらは中学生自身がお薦めの本を選び、その理由も添えてホームページ上で公開している。
県教委によると、こうした取り組みの成果として、小学校、中学校ともに本を読んだり、借りたりするために図書館や図書室を利用する児童・生徒が増え、「朝読書」などの一斉読書を行う学校の割合も全国平均と比べて高くなっているという。小学校では「読書が好き」と答えた児童の割合は約75%を示し、これも全国平均より高い。
その半面、家庭や図書館での1日当たりの読書時間の項目を見ると、「全く読書をしない」と答えた児童・生徒の割合が小学生で約4分の1、中学生は半数近くあり、年齢が上がるにつれて友人との携帯メールのやりとりなどに時間が奪われ、読書をしない子が増える状況も浮き彫りになっている。
県教委の木下公司教育長は、「全国学力・学習状況調査の結果によれば、読書が好きだと答えている児童・生徒は国語の成績がよい傾向が見られる。今後も一層、県や市町、読書活動推進団体が連携・協力し、社会全体で子供の読書活動が推進されるように努めていきたい」と述べている。