沖縄・浦添市、深夜徘徊防止でフォーラム

「夜回り先生」水谷修さんが講演

 沖縄県では、深刻化する少年非行、中でも、青少年の深夜徘徊(はいかい)が深刻な問題となり、対策が急務。12日には、「夜回り先生」として知られる花園大学客員教授の水谷修さんを講師に招いて「深夜はいかい防止フォーラム」(主催・沖縄県、沖縄県教育委員会、沖縄県警察)を浦添市で開催した。教育関係者、中高生ら約1000人が参加し、深夜徘徊の現状や対応策を話し合った。(那覇支局・豊田 剛)

「まずは大人が夜、家に帰る」

スマホ依存で生活習慣に乱れ

沖縄・浦添市、深夜徘徊防止でフォーラム

基調講演する水谷修さん

 基調講演を行った水谷さんは元神奈川県高校教師。夜間定時制高校で教えたことをきっかけに、23年間、夜間パトロール活動を行い、青少年の非行防止と更正に努めた夜回りの第一人者だ。

 「沖縄の大人たちが夜の9時になったら家に帰ればいい。そうしたら深夜徘徊なんてどの子がしますか。大人がまず見本を見せるのです」

 水谷さんは大人が夜飲みに出掛ける夜型社会が元凶だと指摘。午後10時以降に家庭を未成年者だけにすることが児童虐待にあたると説明し、大人の自覚を促した。

 「どの子だって本当は温かい父さん母さんのいる温かい家庭でたくさんの愛と優しさの中で生きたい。(夜の世界に子供たちを)捨ててるのは一体誰なんでしょうか。大人の方々は忘れないで下さい。子供は親を選べない」

 水谷さんは、家庭や学校で否定され続け行き場を失った子供たちが夜の世界に入り込む現状を嘆き、学校や家庭で常に優しい言葉を掛けてあげるよう大人に呼び掛けた。

 講演に先立ち、主催者あいさつで、諸見里明教育長は、「県特有の夜型社会に加え、急速に普及するスマホへの過度な依存などに象徴されるように、児童生徒の基本的生活習慣の乱れが急速に進んでいる」と警鐘を鳴らした。

 加藤達也県警本部長は、少年の深夜徘徊は非行の入り口となり、事件事故に巻き込まれることがあるとして、「家庭、学校、地域が連携した取り組みをすることが必要だ」と訴えた。

沖縄・浦添市、深夜徘徊防止でフォーラム

深夜徘徊をテーマに行われたパネルディスカッション=12日、てだこホール(浦添市)

 講演に続いて行われたパネルディスカッションでは警察、学校、父母、生徒の代表らが登壇。子育てに対する親の自覚、深夜徘徊を繰り返す非行青少年の居場所作りの大切さ、中高生に目標を明確にさせることの重要性が主に論じられた。

 沖縄県は平成22年、出会い系喫茶などを利用した青少年性犯罪被害が増え、女子高生を被害者とする児童買春事件が発生したことから再発防止策を整備した。しかし、つい最近でも、県教育庁中頭(なかがみ)教育事務所のトップの男が中学生にみだらな行為をして逮捕されたばかり。

 県警は、深夜徘徊が飲酒や喫煙などの非行、さらには、窃盗や薬物などの犯罪に手を染めるきっかけとなり、女子の場合は性犯罪に巻き込まれてしまうと警告する。

 県警発表によると、平成25年の不良行為で補導された少年は前年より約2万人多い5万9695人と県警が統計を取り始めた昭和47年以降で最多を記録した。そのうち中学生が占める割合は59%となり、3年連続で全国最多となった。

 非行の中でも、深夜徘徊は4万1818人で全体の7割に達する。少年の人口千人当たりでは約180人となり、全国平均(29・4人)の約6倍となった。人口が同程度の長崎県や愛媛県と比べると26倍という高さだ。さらに、非行の低年齢化が進み、昨年度は深夜徘徊の補導件数で初めて、中学生が高校生を上回った。

 事態を重く受け止めた県警や県教育委員会などは6月、緊急県民集会を県庁で開き、青少年の健全育成に向けた活動の推進を確認。フォーラムはその活動の一環として開催された。