沖縄県教育庁、中高一貫校新設へ
学力全国最下位からの脱出に本腰
沖縄県教育庁は、早ければ3年後の2017年春から公立の中高一貫進学校の設置を検討している。国公立大学の合格者数は増加傾向にあるものの、東京大学など難関国公立大の合格者数は他府県と比べると、極めて少ないのが現状だ。成績優秀な生徒の県外流出を防ぐためにも、早期の中高一貫進学校の設置が願われている。(那覇支局・豊田 剛)
難関国公立合格めざす
昨年度、公立校からの東大入学なし
諸見里明教育長は4月に開かれた県立学校長研修会で、那覇市に隣接する南風原(はえばる)町にある県立開邦高校に中学部を設置する考えがあることを明らかにした。
今月7日に開かれた県議会6月定例会の一般質問では、沖縄本島中部の中頭(なかがみ)郡選出の中川京貴議員がこの問題で集中質問し、大学進学の現状が明らかになった。
県立高校の現役の国公立大学現役合格者数は、平成元年度280人だったものが25年度は1212人と大幅に拡大した。ところが、難関国公立大学の現役合格者数は、平成23年度は20人、24年度は25人、25年度は15人で、九州における同規模高校と比べて10分の1しかない現状を報告した。
さらに、東京大学合格者数は23年度2人、24年度1人、25年度0人。これについて諸見里教育長は「率直に申し上げて少なすぎる」と述べた。
諸見里教育長は「県内の高校生にも東大に合格する能力がある」と擁護した上で、「開邦高校ができた(28年前)当初、せめて毎年2、3人ずつ東大に合格させるよう進めてきたが結果的には失敗だった。大きな欠点は、開邦高校に合格するレベルの生徒でも3年間で東大に合格するレベルに到達させるにはかなり無理がある」と説明。本土では小学校の頃から東大を意識させ、中高一貫校に入学させる傾向があることが大きな違いだと指摘した。
難関国立大学の合格者数が低い理由について、諸見里教育長は「教育水準があり能力がある児童・生徒を継続的に伸ばしていく教育システムがなかったことが原因」と分析。中高一貫校の欠如を問題視した。
開邦中高一貫の意義として、①生徒のニーズにこたえる教育システムの構築②6年間を通じて高い教育目的を掲げる③生徒・保護者へ教育の幅を広げる――ことを挙げた。
諸見里教育長はまた、鹿児島に新設される県立楠隼中学校・楠隼高等学校(全寮制男子校)が「難関大学への道を開く」をテーマに沖縄で説明会を開いたことに言及。進学意欲の高い生徒が県外に流出することに危機感を表した。
中高生を県外で学ばせることが珍しくない沖縄では、頭脳流出を防ぐ目的で1986年の開邦高校を皮切りに4つの公立進学校が開校した。
同時に、本島中部の進学校・球陽高校にも中高一貫校を早くとも5年後に設置したいという意欲を示した。
公立の併設型中高一貫校は、与勝緑が丘中学校・与勝高校(うるま市)がある。07年4月に新設された。昨年度は県外の国公立大学進学者は1人だった。それでも、琉球大学に12人合格者を出したことは、中高一貫になる前身校の実績と比べればかなりの前進である。
那覇市内の大手塾講師は「県内公立トップの開邦を中高一貫にする意義は大きい。これまで難関大学に進学したければ私立に通うしかなかった。公立の費用で、私立の中高一貫教育と同等の教育が受けられるため、一極集中を避けられる」と語った。