郡山北工高のロボットが世界大会で2位に

 未来を担うものづくり人材を育てようと、学生向け国際コンテスト「第4回国際ナノ・マイクロアプリケーションコンテスト」(iCAN’13)世界大会が6月にスペインのバルセロナで行われた。福島県立郡山北工業高校が世界2位、宮城県工業高校が敢闘賞を受賞した。高校生の上位入賞は世界でも初めてという。

(市原幸彦)

高校生の上位入賞は世界初

「原発廃炉作業に貢献したい」

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スーツ型のコントローラとロボット「Sma ROBO(スマロボ)」=iCANホームページから1

 このコンテストは、微小電気機械システム(MEMS)を用いて高付加価値なものづくりを提案するもので、世界11カ国から5000人以上の学生が応募。各国内予選を通過した9カ国から、若い頭脳18チームがバルセロナに集結し、その技術やアイデアを競い合った。

 日本からは、4月の国内予選で山形大大学院や京都大学、仙台一高などの強豪を抑えて勝ち抜いた郡山北工と宮城県工が出場した。予選では原発事故収束という目的や独創性が評価され、郡山北工が優勝した。

 日本代表の2チームは、出場チームで唯一の高校生ながら、自ら試作した作品を英語で堂々とアピール。展示での一般来場者の投票とプレゼンテーションでの専門審査員による審査の結果、郡山北工と宮城県工が栄冠を勝ち得た。

 そのうち郡山北工チームは、コンピュータ部(部活)の4人。人の動きを検知する超小型センサーを用いて、人の動きで操縦できるスーツ型のコントローラとロボット「Sma ROBO(スマロボ)」を提案。「原発の廃炉作業に貢献したい」という思いから生まれた。

 操縦者が足踏みすると前進するなど、手と足の組み合わせであらゆる方向に移動できる。操縦者が、ロボット搭載カメラから無線で送られる映像をもとに遠隔操作でき、赤外線による障害物衝突防止機能もある。

 深澤剛教諭(情報技術科)は「高校生になると、ある程度の知識を身につけ、逆に『できないよ』とあきらめる子も多い。けれども、大学生がメインのコンテストに高校生が挑戦するだけでもすごい。福島から世界に挑戦している工業高校生がいることを、ぜひ見ていただきたい」と語る。

 生徒たちも「俺達がやるんだ」という意識で一生懸命取り組んだ。世界大会出場が決まった後は、毎日のように改良を重ね英語も猛勉強した。

 東日本大震災直後、余震の中で高校生活を始めた4人。原発事故の避難指示区域から避難し、転入してきた同級生もいる。3年生になった今も、「震災や原発事故が頭から離れた日はない」と言う。

 1年ほど前、原発の事故現場で、がれき撤去などに外国製ロボットが使われたことをテレビで知った。「日本は高いロボット技術を持っているが、災害現場などで活躍できるロボットの開発は遅れていることに問題を感じた」(リーダーの高畑悠さん)ため、「誰でも簡単に操縦でき、災害現場でも使えるものをつくろう」(同)と、チームを結成し、今年1月から本格的な製作に取りかかった。

 展示では、併催の国際会議に参加した研究者ら、いろいろな来場者に自分たちが開発したアプリケーションを紹介。初日午前中は英語が全く聞き取れなかったが、次第に冗談や表情もつくれるようになり、うまく伝えられるようになった。

 専門審査員へのプレゼンテーションでは、大きな概要で、シンプルに説明するように心がけた。使い方を分かりやすく表現した寸劇も入れ、審査員から拍手を送られた。

「練習してきたことは全て出し切れた。『福島が大変なんだぞ、だけど頑張ってるぞ』というのを押し出せたかなという感じがした」(橋元佑真さん)。

 同校はロボット製作がさかんで、09年の第67回全国学生児童発明工夫展で恩賜記念賞受賞はじめ、10年には第68回同展内閣総理大臣賞、第6回世界青少年発明展最高賞など多くの受賞歴がある。地域の科学館と連携し、小学生を対象にしたボランティア活動も行ってきた。

 深澤教諭は、「もっと役に立つ製品開発をと思っていたところにiCANを知り、挑戦しようと思った」と語る。昨年のiCAN’12世界大会(北京)では敢闘賞を受賞した。来年の世界大会は「防災」をテーマに、初めて日本で東北大学(仙台市)を会場に開催される。

 「来年は地元日本で頂点をとれるように後輩の生徒も頑張ってほしい」と深澤教諭。

「原発事故の収束には、40年以上かかると言われる。彼らは、次世代につなげる役割も担っており、その意識で取り組んでもらいたい。福島県人、日本人として工業の世界で活躍できる社会人になってほしい」と語っている。