札幌市立札苗中学で初の学校説明会

PTA主催で地域・家庭との連携深める

 学校説明会は高校や大学で頻繁に行われているが、札幌市内のある公立中学校が3月上旬、入学予定者とその保護者を対象に学校説明会を開催した。校内紹介にとどまらず、現役教員によるマジックや落語などを披露し、新年度に入学する児童や保護者に「開かれた学校」をアピールした。(札幌支局・湯朝 肇)

教師による落語などで和む、「荒れている」の声払拭に期待

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札苗中学校の生徒会メンバーによる学校紹介

 「次は中から何が出るかな。今日は鳩は出ません。はい、きれいな花が出てきました」「中学校には、こんな面白い先生が沢山いるよ」

 卒業式を間近に控えた今月9日、札幌市東区にある札苗中学校では4月に新入生として入学してくる児童やその保護者を対象にした学校説明会を開き、約100人が参加した。同校のPTA関係者や少年非行を担当する警察関係者も出席。学校を取り巻く環境や学校の年間行事などの説明が行われた。

 学校紹介では、同校生徒会のメンバーが学校行事、服装、修学旅行などについてスクリーンを使いながら丁寧に説明。「在校生は新しく入ってくる新入生を心より歓迎します」とエールを送った。また、余興のアトラクションでは、現役の教師が落語やマジックショーを披露した。

 札幌市内では私立中・高校および大学の説明会は毎年定期的に行われているが、公立中学校でのオープンな説明会はほとんど開かれていない。そうした中で、今回学校説明会を行った経緯について、同校の佐々木亮校長は「実は札苗中学校は昨年の一学期に校内のガラスが何者かによって割られるという事件がありました。『当校は荒れているのではないか』という保護者の声もあり、それならば一度、学校に保護者に来ていただいて実情を見てもらおうということで今回初めて開催しました」と語る。

 PTA関係者の中には、「今回の学校説明会に関して、保護者家庭全部に開催のチラシを配布したが、もっと参加してくれると期待していた」という声がある。その一方で、同校PTAの瀬川友一会長は「こうした学校説明会を定期的に開催することで学校を理解してもらえる」と、今後への期待を込めて語った。

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学校説明会後のアトラクションで披露された現役教師による落語

 公立中学校における保護者や学校周辺地域を対象とした定期的な学校説明会の意義について、名寄市立大学の加藤隆教授は次のように語る。①地域に学校を開放することで、地域と学校の間に信頼関係や連帯感が生まれる②地域との連携が深まれば、少年犯罪の減少にもつながる③新入生となって入学してくる小学生6年生を対象に行うことで、中学校に対する壁が消え、いわゆる「中一ギャップ」がなくなる――などだ。

 確かに、近年の少年犯罪はインターネットに絡んで複雑化の様相を呈しているが、少年犯罪を防止する点からも学校・家族・地域の連携は不可欠。この日出席した北海道警察本部少年課の井川一彦課長補佐は「凶悪犯罪に中学生が利用されることがよくあります。自分の子供は大丈夫と思っても、しっかり見守ってあげなければなりません。とくにスマホなどを使った犯罪に中学生が巻き込まれるケースが目立っています。家庭内でのコミュニケーションを日頃からとるようにして下さい」と訴えた。

 「学校は地域の拠点であり、子供たちは宝です。『札苗中は荒れている』という声もありますが、そうした声を払拭していく意味でも学校と地域の連携を深めていきたい」と語る井川会長。同校の新しい取り組みは、学校教育の活性化モデルとして注目される。