沖縄の地域性・優位性を生かして「英語立県」を
那覇市で英語教育シンポジウム
国際性と多様な能力を育む教育システムの構築が求められている現在、沖縄県では地域振興に貢献できる人材の育成や世界との交流ネットワークの構築、国際感覚を有した人材育成の形成が喫緊の課題となっている。こうした中、沖縄の地域性・優位性を生かした英語教育について考えるシンポジウムがこのほど那覇市で開かれ、国際言語としての英語を身に付けることの重要性が強調された。(那覇支局・豊田 剛)
米軍基地を有効活用/教員養成が喫緊の課題
2011年度より小学校で英語教育が必修となったことを受け、沖縄教育委員会は同年9月、「英語立県沖縄」構想を発表。12年度より「英語立県沖縄推進戦略事業」を展開している。具体的には、「県内中高生の英検合格率日本一」を達成目標として、「交流・体験」をキーワードとしながら中学生英語キャンプなどの取り組みを行っている。
また、世界に開かれた最高水準の研究・教育を展開する沖縄科学技術大学院大学(OIST)が12年9月、恩納村に開学。さらには、幼稚園から小学校まで一貫教育を英語で展開する「沖縄アミークス」も11年4月にうるま市に開校。今年4月からは中学校コースが新設される。
英語教育の環境が整いつつある中、「沖縄の地域性・優位性を生かした英語教育の実践」をテーマに「英語教育を考えるフォーラム」(主催・沖縄の英語教育を考える実行委員会)が今月15日、那覇市の沖縄産業支援センターで開かれ、学校長、英語教師、企業役員ら約150人が集まった。
基調講演は、「世界・アジアの視点から英語教育を考える」と題して青山学院大学の本名信行・名誉教授が行った。英語を学ぶのは①個人の可能性を伸ばす②どんな仕事にも役立つ③学問、研究に役立つ――ということを児童生徒にくり返し伝えることが大事だと話し、「万国津梁(しんりょう)(世界の架け橋)」の精神のDNAが残る沖縄に期待を示した。
本名氏は、「英語のコミュニケーション能力」と「異文化間理解」がグローバル人材に求められる要件で、「英語は外国語というより国際言語で、世界で3人に1人が何らかの形で英語を使っている」という現状を説明した。また、アジア圏で顕著なように、英語を話す相手は、「実際、英語が母国語でない人の場合が圧倒的に多い。国際言語になっていることを理解してほしい」と訴えた。
沖縄が英語立県になるためには、「全県を英語教育特区にすること」と「小中高で一貫した教育をすること」が必要だと強調。「喫緊の課題は教員養成」で、教員研修や大学での小学校英語教育専攻の設置を求めると同時に、アジア太平洋地域の英語センターの設立を提案した。
引き続いて行われたシンポジウムには、OISTのニール・コールダー副学長、JICA沖縄国際センターの小幡俊弘所長、沖縄観光コンベンションビューローの上原良幸会長がパネリストとして参加。琉球大学教育学部大城賢教授がコーディネーターを務めた。
コールダー氏は「米軍基地がある沖縄には英語人口は何千人もいる」と述べ、米軍コミュニティを有効活用することを提案。さらに、同氏の母国であるイギリスから学生を沖縄の高校に留学させて、英語でコミュニケーションする環境を整えたいと意欲を示した。
小幡氏は、自身が留学した経験から、「沖縄の英語教師はどんどん海外の生活を経験してほしい。そして、現地で学んだ経験を子供たちに伝えてほしい」と訴えた。
元副知事の上原氏は「県庁を訪れるアジアの人々はほとんど英語を話す。英語を話すことができればもっと沖縄振興ができたかもしれない」と振り返った。沖縄を訪れる外国人観光客について「昨年は過去最高の55万人を記録し、20年までに200万人を目指している」と説明。一方で、「コミュニケーション能力のある人材が不足している。早急に対応しないと、世界水準のリゾート地になるのは困難」との見方を示した。
シンポジウムを聞いた団体役員の男性は「沖縄県の学力最下位は簡単に克服できるものではないが、英語立県を目指すのであれば行政は英語教育に本気で取り組むべきだ」と話した。