「家庭科」の家族観への失望、悩む女子学生
「教師になる夢を諦めた友人がいる。私もどうしようかと悩んでいる」
2016年3月検定の家庭科教科書(高校)に「LGBT」(性的少数者)や「性的指向」という言葉が初めて登場したのを受けて、大学の教職課程で学ぶ女子学生に話を聞いた時の言葉だ。
愛情豊かな家庭の大切さを子供たちに伝えたくて、教員免許を取得しようと頑張っているという学生だった。しかし、授業では、同性パートナーシップ制度を導入する自治体が出てきたなど「家族の多様性」ばかりが強調される。その一方で、両親がそろっていることを標準とする、伝統的な家族の考え方は個人を抑圧するという流れの中で授業は進んでいるというのである。彼女はそうした授業に失望していた。
実際、ある教科書は「家族の多様性については、国際的にも共通認識になっている」とする。欧米先進国に限ればそうだろうが、イスラム圏のように伝統的な家族を守ろうとする国が多いのにそれには触れない。
こうした高等教育の現状に、疑問を感じている学者もいる。子供の心の成長には母親・父親両方の役割が重要性だと説く発達心理学の教授らだ。しかし、それを言えば、「固定的な性別役割分担」の押し付けだと、進歩的な教授陣から攻撃されるので肩身の狭い思いをしている、と彼女は嘆いていた。
来年度から高校1年生が使う教科書の検定結果が公表された。家庭科だけでなく、公共や保健体育のほぼ全ての教科書がLGBTを取り上げ、パートナーシップ制度や同性婚に触れた記述も増えている。LGBTは学習指導要領に書いていないにもかかわらず、文科省の担当者は「LGBTの記述が充実してきている印象だ」と評価している。冒頭の女子学生はその後、連絡先が分からなくなってしまった。教師になるという彼女の夢がどうなったのか、気になっている。
(森)