この夏、先の大戦を振り返る番組ではNHKの「特攻 知られざる真実」が出色だった。


特攻(Wikipediaより)

Wikipediaより

 この夏、先の大戦を振り返る番組ではNHKの「特攻 知られざる真実」が出色だった。沖縄戦で散華した陸軍の「誠隊」の壮絶な戦いを取り上げた。

特攻攻撃で沈没した米艦の海底調査などを基に、攻撃の凄(すさ)まじさを再現するとともに、死を覚悟しながらも苦悩、葛藤する若い隊員たちの心の内に迫っている。戦後76年にして明らかになった真実が問い掛けるものは重い。

小津安二郎の戦後の映画には、戦争が影を落とすものが多い。昭和26年の「麦秋」は、戦争で息子を失った老夫婦が、大和の耳成山を遠景に麦畑の道を行く花嫁行列を眺める有名なシーンで終わる。

「新潮」で連載中の「小津安二郎」の中で平山周吉さんは、自身中国戦線に出征した小津が、戦死した同僚の映画監督、山中貞雄や戦友への追悼の気持ちをこの作品に込めたことを縷々(るる)語っている。ただ平山さんによると「麦秋」が封切られた頃の同時代評には、戦争に言及したものが少ない。「戦争の傷跡は、まだまだ残っていても、戦後を生きる日本人の関心は目の前のことに集中してしまっていたのだろうか」。

戦争の記憶は生々しく、忘れたいという気持ちもあっただろう。いずれにしても日本人に余裕はなかった。歴史の真実が明らかになるには時の経過が必要だ。

しかし、ただ「戦争は悲惨だ」という当たり前の結論に終わらせては意味がない。それでは、今も世界各地で起きている戦争をなくすことはできない。

(サムネイル画像:Wikipediaより)