貧困層が拡大か


地球だより

 エジプトの首都カイロ市内を車で走行すると、実に多くの物乞いに出会う。

 信号待ちする車両を狙い、ある女性はちり紙が入った袋を手に、ある男性は、車の窓を拭く布を手に持ち、ある老人はただ、手だけを出して運転手や車中の家族を目当てに金銭を乞う。

 何とも哀れで仕方がないのだが、最近その数が増えているように思える。一昔前もかなりいたが、ここまで頻繁ではなかった気がする。貧困層が拡大しているということなのだろうか。

 さらに心痛いのは、小さな子供が親に代わって物乞いしている姿だ。しつこくつきまとう子供もいるが、断られると笑顔を振りまいてさっと立ち去る子供もいて、心を打たれる。この子供たちは将来どんな人に成長していくのだろうか。

 日本では久しく見なくなった光景だが、地下鉄の車両の中での物売りも、エジプトではとても多い。ボールペンやライター、小さなカバンなど、雑多な日用品を持って車中の人々に売るのだ。子供が売っている場合もある。たくましいといえばたくましいのだが、こういう経験をばねに立派な大人に成長してほしいと祈らざるを得ない。

 イスラム諸団体が、貧困層に対する保護を行ってきたが、最近その力が弱まっているのか、ラマダン(断食月)の時すら、街頭に立って物品を配る姿が久しく絶えている。物乞いが増えているのは、そのことも原因なのかもしれない。

(S)