ヤシ3年、ゴム8年
地球だより
タイはベトナムほどではないが南北に長い。気候や風土も北部のチェンマイと南部のハジャイではかなり違う。
雨期と乾期のリズムは、北部と中部ではほぼ同じだが、南部では様相を異にする。さらに南部でも山を隔てたアンダマン海側とタイ湾側ではがらりと変わったりする。
基本的にタイの雨期は5月から10月までだが、南部ではタイのほとんどが乾期に入ったこの時期に、大雨が降ったりする。
1月に入ってタイ南部12県が深刻な洪水に見舞われている。タイ商工会議所の試算によると、洪水が今月中に治まれば被害総額は100億バーツ(約310億円)程度だが、このまま2~3カ月に及ぶことになれば、被害総額が1000億バーツ(約3100億円)に達する可能性があるという。
南部の主要作物はゴムとアブラヤシ。
仮に洪水が3週間以上に及んだ場合、ゴムの木は枯れる。植え替えてゴムが採れるまでに成長するまで8年はかかる。
アブラヤシも同様、洪水が1カ月以上続くと枯れる。植え替えて収穫できるまでには最低3年が必要だ。
日本では「桃栗3年、柿8年、柚子(ゆず)の大馬鹿(ばか)18年」と言うが、タイ風に改めると「ヤシ・マンゴー3年、ゴム8年」となる。フルーツ天国タイの果物は、南国らしくおしなべて早熟。果物の王様ドリアンで5年。その繊細な味わいが果物の女王としての風格を備えているマンゴスチンでも10年で結実する。さすがに大馬鹿扱いされるような果物はない。
それでもまぶしいほどの太陽と豊かな水で育つ南国の果物も、時に過度の洪水や旱魃(かんばつ)にさらされることもある。
(T)