FN台頭分析の誤り


地球だより
 フランスで12月に行われた地域圏議会選挙は、フランスが地域圏の大幅統合を進めた後の初の選挙だった。11月に起きた大規模なパリの同時多発テロを受け、第1回投票では、移民や治安対策強化を訴える極右政党・国民戦線(FN)がトップに躍り出た。

 「フランスが溶けてなくなりそうだ」と言う友人のミカエルは、中道右派の共和党の支持者だったが、今回はFNに投票したそうだ。彼は「地方自治に政党の政治信条は関係ないね。誰が住民を守ってくれるかだから、今のところFNが最も頼りになりそうということかな」と言っていた。

 結局、第2回投票の結果、FNが過半数を制する地域圏はなかったが、実は、その裏には、なんとしてもFNの政治支配を阻止しようと支持率の低かった与党・社会党候補が立候補を取り下げ、中道右派に投票するように運動した結果だった。つまり、FNをつぶすために真逆の政治信条を持つ政党が結託したということだ。

 日本でも与野党相乗りは、地方選挙ではよくあることだが、実はFNは選挙のたびに政治基盤を確実に拡大しており、前回の2012年の大統領選挙前には、FNのマリーヌ・ルペン党首が世論調査で最有力とされ、昨年の欧州議会選挙ではFNがトップとなった。今回の第1回投票は、FNの基盤がかなり固まってきていることを示した結果でもあった。

 極右とかポピュリュズムという言葉は、一般的にはネガティブに取られやすい。それはファシズムや移民排撃、民族主義に走るというイメージがあるからでもある。思慮の浅い有権者の感情に訴えるのがポピュリズムという解説もある。

 極右の台頭は一般的に、昨今のイラクやシリアからの大量難民や移民問題、白人ヨーロッパ人の職が移民に奪われている問題、治安悪化とテロを結び付けることなどから、支持率が高まっていると説明される。しかし、そうとは言えない現実がある。

 実は数字の上から見ると、極右が台頭しているヨーロッパの国々が、移民問題、失業問題、治安問題が深刻になっているとは言えないからだ。本当は各国の国民のアイデンティティーが揺らいでいることへの危機感の方がはるかに大きいことが真相といえる。マスコミの分析は正確な数字を分析したものとは言えない。

(A)