夢破れた英国留学


地球便り

 英国へは旧植民地だった英連邦諸国から多くの若者たちがより良い教育と就業機会を求めてやって来る。しかし、長引く不景気の中で若年層の就職も厳しく、パートやアルバイトでその日暮らしの生活を強いられているのが実情だ。

 先日、中部イングランドのシェフィールド市でIT技術者になるためにピザ配達のアルバイトをしていた25歳の青年が、配達中に襲われ刺殺されるという事件があった。殺された青年は、英国で成功することを夢見て、2年余り前にスリランカから留学生として同市に来ていた。ITコンサルタントの仕事が決まり、ピザ配達のアルバイトは最後の日だっただけに何とも痛ましい。母国にいる両親も息子の成功を信じて、なけなしの年金から送金して息子を経済的に援助してきたのでショックが大きかった、と伝えられている。

 同じくスリランカから3年前に会計士の資格を持ってロンドンに来た35歳の青年も、いまだに正規の職に就けないでいる。母国での資格は通用しない上、英語力のハンディもあって、これまで倉庫内での仕分け作業や観光案内業などのアルバイトをしてきたが、十分な生活費を稼げず、スリランカにいる妻と2人の幼い子供を呼び寄せられないでいる。

 「英国に行けば良い生活ができる」と安易に信じてやって来る多くの若者たちの夢は空しく破れている。
(G)