下院で不手際続きの共和党

Charles Krauthammer米コラムニスト チャールズ・クラウトハマー

決定的な証拠を生かせず

クリントン氏が大勝利

 【ワシントン】速球を打つにも限度がある。下院共和党は、下院監視・政府改革委員会の公聴会で勝ち目がないことをまるで分かっていない。共和党は敗北を続け、監視・政府改革委員長はとうとう内国歳入庁(IRS)のコスキネン長官への弾劾請求を出した。

 共和党には同情している。IRSは課税免除スキャンダルをめぐって、議会で審議を妨害し、欺いてきた。しかし、弾劾は並のことではない。長官が弾劾されたのは1876年が最後だ。弾劾を支持する人々ですら、コスキネン氏を解任するのは不可能だと考えている。上院で告発されていないからだ。

 チャフェッツ委員長によると、手続きの目的は、IRSには国民の信頼を裏切ったことに対する「説明責任があることを米国民に知らせる」ことにあると指摘した。

 私は違法行為を立証することを全面的に支持する。だが、下院共和党は5年間、何も立証できなかった。ベンガジから「ファスト・アンド・フュリアス作戦」まで、下院での公聴会は世論に対してまったく影響を及ぼしてこなかった。

 例えばIRSについて、当時、ダレル・アイサ氏が委員長だった下院監視・政府改革委員会は大失敗を犯した。IRSのロイス・ラーナー氏に不正を行っていないと主張する場を与えた上で、修正第5条を根拠に質問への回答を拒否することを認めたのだ。トレイ・ガウディ委員は驚いて立ち上がると、ラーナー氏が免責の権利を失っていることを指摘した。

 だがすでに遅かった。ラーナー氏は回答を拒否した。この失敗のせいで、弾劾という手段に訴えることになった。だが弾劾は仕切り直しのためにあるわけではない。

 最近の家族計画連盟の公聴会はどうだろう。共和党はかなり有利な位置にいた。ばらばらにされた中絶胎児の臓器の売買をめぐる交渉が録画され、「選択」とか「女性の健康」などという聞こえのいい言葉の背後にある事実が暴露された衝撃的な出来事だった。

 家族計画連盟の会長は当初は低姿勢で、7月には関係者の無神経な態度について謝罪したものの、公聴会は悠々と乗り切ってしまった。

 共和党の広報活動の失敗の最たるものといえばベンガジ問題だ。特別委員会はヒラリー・クリントン氏攻撃の決定的な証拠を持っていながら、クリントン氏の大勝利を許してしまった。

 11時間にわたる公聴会では、ベンガジでの攻撃前後に起きたことに関して政府に対する強い非難が何度も飛び出した。攻撃前に600件もの警備強化要請が出されていたにもかかわらず、すべて却下されていた。攻撃後には、動画への抗議デモが激化したことが原因という説がでっち上げられた。

 だが、結果は、今、一般に知られているように、委員会は新しい情報を一切提示できず、クリントン氏に対して何もできなかった。それどころか、クリントン氏は英雄であり、犠牲者という印象を与えた。

 どうしてこのような不手際が起きたのか。新情報は手に入れていた。事件の夜、アルカイダのような組織から攻撃があったことを記したクリントン氏から娘のチェルシーさんへ宛てた電子メールを入手したばかりだった。さらにひどいことに、事件の次の日にクリントン氏がエジプトの首相に「リビアでの攻撃は動画とは無関係だということが分かっている。計画的な攻撃であり、抗議行動ではない」と話していたことも把握していた。

 この証拠は公聴会で提示されたが、どういうわけか、すべてのカメラやマイクが向けられ、一面を飾るのは間違いない公聴会の冒頭ではなかった。クリントン氏、スーザン・ライス氏、オバマ大統領がネットの動画と抗議行動を非難する短い映像が流れ、2週間にわたって茶番が続いた。これで全体の流れが変わった。

 メディアも、この偽りと政治的方便の明白な証拠を軽視し、見逃すのに一役買った。どうしてこれほどまでに扱いが小さかったのか。委員会は、この衝撃的な新証拠を強調することなく、国民が名前を聞いたこともないようなシドニー・ブルーメンソール氏のメールについて延々と質問を続けた。

 どのケースでも共和党は、事実も根拠も持っていた。それでもすべてで失敗した。退陣が近い政権の低位の役人を弾劾したところで、どんないいことがあるというのだろうか。

 チャフェッツ氏は、公聴会の目的はIRSにたがをはめることだと主張した。その通りだ。どうすればそれができるのか。大統領のポストを手に入れればできる。IRSに誠意のある新指導部を送り込むことだ。それができれば、司法省も効果的な調査ができる。

 共和党が自己の正当性を説明することは大変なことだが、それができれば目的を達成することができる。

(10月30日付)