ユネスコの横暴に制裁を下せ!
国連教育科学文化機関(ユネスコ)は中国が提出した「南京大虐殺文書」を世界記憶遺産に登録した。中国外務省の華春瑩報道官は9日の定例記者会見で、「歴史を銘記し、平和を大切にし、ともに人類の尊厳を守ることだ」とその意義を強調した。北京からは今回の世界記憶遺産登録を「平和の勝利」と豪語する声すら聞こえるという。
南京大虐殺は1937年12月13日、旧日本軍の占領下にあった南京市で多くの市民が殺された事件だ。中国側はその死者数を「30万人」と主張してきたが、日本側の研究で虚偽と受け取られて久しい。なぜならば、南京市の人口は当時、20万人から多くても25万人程度と見積もられていたから、「30万人虐殺説」はあり得ない。
ここで問題を整理する必要があるだろう。中国や韓国が日本の戦時中の行為を批判し、反日活動に利用するのは両国の国策であり、他国が止めることはできないが、歴史的出来事に対して関係国間の見解が分かれている問題をユネスコが世界記憶遺産に登録したという事実こそ問題とすべきだ。
もちろん、史実が正しいかを調査しただろうが、膨大な歴史資料を精読し、歴史学者や関係者とのインタビューをしなければ判断できない問題だ。短期間で史実の真偽を判断できるものではないはずだ。
ユネスコによると、「世界記憶遺産の審査は14人から構成された国際諮問委員会(IAC)が行う」というが、「委員の選考基準は明確ではないうえ、基本的には2年交代でメンバーは変わる。歴史学者の中で意見が分かれている問題の真偽を判断することは元々できない」という声が聞かれる。
にもかかわらず、ユネスコは中国側の主張内容が正しいと判断し、登録したわけだ。その決定の背後に何らかの政治的打算が働いたのではないか、という憶測を排除できない。ユネスコは関係国の間で不一致の歴史問題について距離を置くべきだ。
日本側はユネスコに対して、「日本側の要請を無視して記憶遺産に登録した。ユネスコに対して強く対策を講じる」と異例の警告を発したという。当然だろう。繰り返すが、中国が南京事件を国策として反日プロパガンダに利用することを止めさせることは出来ないが、ユネスコが史実の是非を一方的な判断で決定したことに対し、責任を追及すべきだ。具体的には、ユネスコへの資金拠出をストップすべきだ。
日本政府は国連機関の横暴に対し制裁を課すべきだ。国連常任理事国入りを願う日本は国連機関への資金援助を拒否しないと他国から受け取られている。卑近な表現をすれば、なめられているわけだ。常任理事国入りの可能性は中国が拒否権を保持している限り、不可能だ。だとすれば、ユネスコへの資金拠出拒否への批判を恐れる必要はない。日本を怒らせたら怖いと思わせたほうが今後の国際外交の舞台では有利になるだろう。“世界の小切手”と重宝がられている段階では日本はどの国からも真の尊敬を受けられないだろう。
ところで、ギリシャ神話によると、幽冥界にレテ河が流れているが、その河の水を飲むと全てを忘れてしまうという。最後の追い込みのため徹夜で勉強に励む受験生が間違って飲んでしまったら大変だが、中国指導者にはぜひとも一度、レテ河の水を飲んで頂きたい。彼らは過去を恣意的に粉飾し、それを政治プロパガンダに利用することを躊躇しない。その彼らがレテ河の水を飲めばどうなるだろう。反日プロパガンダのために莫大の資金とエネルギーを投入してきたこれまでの言動が馬鹿らしくなるのではないか。プロパガンダはあくまでプロパガンダで、事実ではないからだ。中国指導者を偽りの過去から解放すべきだ。
(ウィーン在住)