期待高まるフランスの「極右」政党
地球便り
フランスで行われた県議会議員選挙でも大躍進を見せた国民戦線(FN)は、今やポピュリズムのマイナーな極右政党を脱皮し、政権を狙う政党に成長した。日頃、同党に対してネガティブな報道しかしないフランスのメディアが、FNが政党として市民権を得ていることを認める分析を行っている。
かつて、2002年の大統領選挙で現職のジョスパン仏首相を破って、第2回投票に進んだFNのルペン前党首に対して、マスコミは総出でFNたたきのキャンペーンを展開した。ところが大統領選挙を1年後に控えた11年、世論調査で最も大統領として好ましい人物に選ばれたのは、マリーヌ・ルペン現FN党首だった。
昨年の統一地方選挙と欧州議会選挙では、過去最大の躍進を遂げ、今回の県議会議員選挙の躍進と合わせ、フランス政界で完全に無視できない政党となった。仏メディアは「FNは他の欧州諸国の極右政党とは次元を異にしている」と指摘し、単純な移民への国民の嫌悪感をすくい上げるポピュリズム政治運動ではないとしている。
パリのコンサルティング会社に勤めるミカエル・ポワリエ氏は「07年の大統領選で中道右派のサルコジ候補に投票したが期待を裏切られたので、12年の大統領選ではオランド氏に投票した」という。ところが今では保革の大政党への期待感はまったくなく、FNだけがフランスを変えられると確信しているそうだ。
無論、今年1月に起きた風刺画週刊紙、シャルリエブド襲撃テロ事件は、アラブ系移民への憎悪をかきたて、FNには追い風となったことは否定できない。だが、党首のマリーヌ・ルペン女史は、過度な移民排撃的発言は慎んでいるし、反ユダヤ主義的行動を扇動することは拒否している。
FN支持者の一人、IT系ベンチャー企業のシャンポリオン社長は「FNの主張は、フランスの本当の保守主義であって、極右と呼ぶのはおかしい。極右的イメージは反共のFNに対して共産党系メディアが与えたものにしかすぎない」と指摘している。(M)