クリスマス手当


地球だより

 フランスには家庭の経済を支えるさまざまな手当が支給されている。代表格は家族手当(子供手当に相当)で、欧州で最も高い出生率を支える手当として日本でも知られる手当だ。しかし手当には日本では考えられないような手当もある。

例えば、バカンス手当もその一つで、所得が低く、子供が多い家庭なら、バカンスに行った時に掛かった交通費や宿泊費の一部を請求できる。その他にも住宅手当などは所得や子供の数に応じて、家賃補助という形で支給される。

バカンスは国民生活にとって極めて重要だと考えるフランスでは、バカンスに行けないのは人間として哀れむべき状況と見なされる。その同じ理屈でクリスマス手当というのが存在する。

今年もその季節がやって来たので、生活支援金などを国から受け取る家庭では、1世帯子供2人の場合、320ユーロ(約4万7000円)が国から支給される。

これで子供たちはクリスマス・プレゼントを受け取り、クリスマス会を開き、アミューズメント施設に遊びに行くことができる。クリスマスを祝うのは国民的行事で、それを経済的理由で祝えないのは哀れな状態というわけだ。

仏政府によれば、今年クリスマス手当が支給される対象者は183万人という。ワーキングプアと呼ばれる最低賃金しか受け取っていない層や失業手当が切れて生活支援金を受給している世帯あるいは単身者たちが対象者だ。

国はそのために約4億ユーロ(約590億円)を支出することになるが、そのお金はクリスマス時期に消費に回され、税金として返ってくる部分もある。とはいえ、批判がないわけではない。キリスト教徒でもない、例えばイスラム教移民家庭も受け取る。

フランスでは政教分離の原則から、イスラム教徒の女性がスカーフを公立学校で着用することを禁じている。イスラム教徒は「宗教差別」と批判しているが、クリスマス手当はありがたく受け取るのは矛盾しているという声もある。

とはいえ、キリスト教徒でもない日本人がクリスマスを熱狂的に祝う不思議は、もっと説明がつかないかもしれない。

(M)