欧州でも厳しい格差社会改善


地球だより

 欧州諸国は金融危機以降、財政再建のために緊縮政策を継続しており、公共サービスや社会福祉予算が削減されている。一方、民間部門での景気回復も進まず、多くの人は失業するか低賃金労働をせざるを得ない状況に置かれている。一部の富裕層を除けば、大衆は実質所得が目減りし生活が苦しい。欧州でも格差社会は確実に進行している。

 英国は国内総生産(GDP)成長率が0・7%(第3四半期)、失業率も6%(9月末)で景気回復の兆候が出てきたと言われているが、実態は多くの人がパートタイムや非正規雇用による低賃金労働を強いられている。特に若い世代が低所得であり、このままフリーター世代が増えれば国内消費需要は見通しが暗い。隣国フランスは成長率、失業率ともに英国よりも数値上は悪いが、社会保障によって労働者の権利が守られている。

 金融資本主義が支配する今日の世界経済システムの中では、小さな政府も福祉国家も打つ手に限界があるが、格差社会の元凶は富の偏重にある。各国政府は金融政策、財政出動によってマクロ経済を改善しようとするだけでは不十分で、税制による富の公平な分配ならびに最低賃金を保証し、老後も安心して生活できる社会保障制度を整備して、公正な社会をつくらなければならない。

勤勉に働く者が平均的な生活をする収入を保証され、退職後は公的年金だけで暮らせる社会が理想だが、先進国はどこも成功していない。

(G)