スコットランド独立住民投票の教訓


地球だより

 スコットランド独立の住民投票は独立反対派勝利の結果に終わったが、今後の国家の在り方に対する重要な教訓を投げ掛けた。賛成派、反対派が公明正大にキャンペーン活動し、84・6%という高投票率で住民の意思が明確に表明されたのは成熟した民主主義の下でのみ可能なことだ。クリミア、南スーダン、東ティモールなどのケースとは異なる。

 従来の独立運動と言えば、国内外での支配・抑圧、武力闘争、憎悪や差別への反発、外国の干渉などが大きな要因だったが、現在のスコットランドの独立運動は地方分権化の延長上で自立したいという願望からきている。結婚に例えれば、けんか別れや破綻ではなく、これまで何とかうまくやってきたが協議離婚してもっと自由で豊かな生活をしたいということだ。

 それ故、両陣営のキャンペーン活動は主として、通貨・金融、財源など経済問題を争点にして行われていた。独立と残留とではどちらが得か損かというレベルでの話だ。しかし、結婚生活は損得だけでは決まらない。そこには過去の歴史的な経緯を含んだ愛憎の心情関係が重要な比重を占める。

 賛成陣営はしばしばスコットランド人の自尊心に響くような心情的訴えを行っていたが、反対陣営からも投票日の前日にスコットランド出身のブラウン前首相が「偏狭な民族主義によって引き裂かれるな」と呼び掛けて、英国内に残留するのが本当にスコットランドを愛する者だと主張し、大きなインパクトがあった。

 スコットランド独立投票は、成熟した民主主義と開かれた愛国心を喚起した点で大きな収穫だった。

(G)