【上昇気流】歌手で俳優の西郷輝彦さんが亡くなった


鹿児島

 歌手で俳優の西郷輝彦さんが亡くなった。75歳。橋幸夫さん、舟木一夫さんと共に昭和歌謡の「御三家」の一人。1964年に「君だけを」でデビューしていきなり60万枚の大ヒット曲となり、その後も「星のフラメンコ」などのヒット曲を連発して一世を風靡(ふうび)した。

 後年の俳優としての活躍も忘れ難いが、デビュー当時を知る世代には、歌謡曲の黄金時代の輝く星だった。男らしく凛々(りり)しいルックスに甘くロマンチックな雰囲気を持つ歌声は、当時小学生だった気流子にも実に鮮烈だった。その人気は男性、女性を問わず、さらに子供からお年寄りまで世代を超えていた。

 芸名は郷土鹿児島の英雄、西郷隆盛にちなんだ。眉の濃い凛々しい顔は、西郷のイメージと自然と重なった。65年発売の「青年おはら節」は、星野哲郎の詞に「鹿児島おはら節」をアレンジした曲を付けたもの。

 「西郷隆盛おいらの兄貴。国の為ならおはらはー死ねという」の一節がある。訃報を聞きユーチューブで数十年ぶりに聴いてみたが、明るく意気軒昂(けんこう)な時代の雰囲気を伝える曲だ。

 西郷が城山で自刃した後、その死を悼む人の間で夜空に「西郷星」が出現するという噂(うわさ)が広まった。赤い星の中に陸軍大将の姿の西郷が現れたというので、錦絵にも描かれた。

 西郷さんのヒット曲には「星空のあいつ」「星娘」など「星」の付くものが多い。西郷さんはこれからも昭和歌謡の星として、ファンの心の中で輝き続けるだろう。