気候変動は既定事実ではない

チャールズ・クラウトハマー

米コラムニスト チャールズ・クラウトハマー

非科学的な温暖化論議

極端気象の増加は根拠なし

 【ワシントン】何度も言うが、私は地球温暖化を支持していない。地球温暖化を否定している。ずっと前から、大量の二酸化炭素を大気中に放出するのは人類にとっていいことではないと思っていた。だが、20年、30年、50年後に何が起きるかを正確に知っているかのように見せ掛ける科学者らは、白衣を着た伝道者だと思っている。

 伝道者のリーダーであるオバマ大統領は、最近行った一般教書演説で「論争の結論は出ている。気候変動は事実だ」と主張した。本当だろうか。科学が結論が出ていて、不変で、難しい課題に直面しても変わることはないと考えることこそ、まさに非科学的と言うべきだ。気候以外を例に取ってみよう。マンモグラムは、乳がんによる死を減らすのに貢献してきたと長い間考えられてきた。この事実は不変だと考えられ、オバマケアでは全保険プランで無料のマンモグラムの実施を要求している。

 だが、無作為に抽出した9万人の女性を25年にわたって追跡調査した大規模な研究から、マンモグラムは乳がん死に効果がない可能性があることが明らかになった。それどころか、マンモグラムによる診断を受けた5人のうちの1人は、不必要な放射線治療、化学療法、手術を受けていた。

 結論が出ていると考えるのはもうやめにしよう。気候のことは、乳がんほどにも分かっていない。気候に関する理論が確立されているというのなら、どうして予測が変動するのか。1970年代後半に気候の調査を行った著名な物理学者フリーマン・ダイソン氏は、現在の気候変動のカサンドラ(ギリシャ神話の凶事の予言者)らは完全に間違っていると言っているではないか。

 ダイソン氏によると、気候学者らは流体力学を使って大気と海洋を分析するが、生物学、つまり生物、表土の影響は考慮していない。その上、自分が気に入ったモデルで予測を行っている。「10年間もコンピューターのディスプレーの前に座り続け、自身のモデルが現実を反映していると思い始めた」。大気学者のリチャード・マクナイダー、ジョン・クリスティー両氏は、当然のことだが、これらのモデルによる予測は「常に、見事に外れ」、驚くべきことに常に、同じ方向に向かっていると指摘している。

 オバマ氏は21日、これ見よがしに、旱魃(かんばつ)に見舞われているカリフォルニア州を訪問し、気候変動のせいにした。これにはニューヨーク・タイムズ紙ですら否定的な見方をし、「最新のコンピューター予測では、世界が温暖化すれば、カリフォルニア州は冬季には乾燥するのではなく、雨が降るはずだ」と指摘した。現状とは全く逆だ。

 矛盾している。しかし、こんなことは以前にもあった。ハリケーン「サンディ」は、ハリケーンなど「極端な気候現象」の頻度と規模が高まるという主張を裏付けるシンボルのように扱われた。

 これはおかしい。サンディは米国を襲った時、ハリケーンですらなかった。2012年に米国に上陸したハリケーンは一つだけだった。13年のハリケーンの数は30年で最も少なかった。この半世紀の間に米国を襲った大型ハリケーンの数は、それ以前の半世紀の3分の1だ。

 竜巻も同じだ。竜巻被害が出るたびに、気候変動の議論が始まる。しかし、昨年発生した竜巻は、過去四半世紀で最も少なかった。地球温暖化が言われてきた過去30年の藤田スケールF3以上の大型竜巻は、それ以前の30年に比較して30%少なかった。

 どれも解決の手掛かりにはならない。結論は出ていないのだ。重要なのはそこだ。事実は、確立された科学という概念そのものを覆している。このような概念が、批判を封じ込め、議論の正当性を失わせるために用いられてきた。「否定論者」という言葉が使われているが、これはホロコースト(ユダヤ人大虐殺)否定論を思い出させる。確立された歴史的事実を悪意を持って否定するという印象を与え、軽蔑に値する。

 気候変動支持者らは、気候変動を忠誠や信条の問題にしてしまった。科学的倫理を勇敢に支持するふりをするこれらの人々の唱える悲観論には、一種の信仰のようなものを感じる。聖書には、他の神に仕えれば「主はあなたがたにむかい怒りを発して、天を閉ざされるであろう。そのため雨は降らず、地は産物を出さず、あなたがたは主が賜わる良い地から、すみやかに滅びうせるであろう」(申命記11章)と記されている。

 まるでカリフォルニアだ。新しい神「母なる大地」以外の神に見放された。そして、石炭を燃やし、完全装備のフォードのピックアップトラックを運転するという新しい罪が誕生した。

 それでも、裏切りは裏切りだ。神々をなだめる必要がある。そのために、カリフォルニアが旱魃に見舞われると、司祭長をエアフォースワンで乾燥した土地に送り、悔い改める会衆らに代わって、「気候回復基金」という10億㌦の供え物をささげさせた。エアフォースワンも二酸化炭素を排出するが、この際気にしないことにしよう。

 確かに「科学的結論」は生きている。