地域言語が風前のともしびーフランスから
地球だより
フランスには、なんと75の地域言語が存在するといわれる。これらは方言ではなく、独立した言語だ。この地域言語が消滅の危機にさらされている。
筆者が教鞭(きょうべん)を執っていた仏西部ブルターニュ地方レンヌの大学では、今から約20年前、同地方の地域言語、ブルトン語の講師が言語クラスに加わった。よく知られる地域言語は、ブルトン語の他、仏南西部のバスク語、南部オクシタニー地方のオック語、ナポレオンの出身地コルシカ島で話されるコルシカ語などがあるが、いずれも話者の減少や使用頻度が低くなり、いわば絶滅危惧言語になりつつある。
初等教育でも小学校卒業(10~11歳)までに授業の一部をブルトン語で行うブルターニュ地方では、日常会話レベルの習得を目指している。ブルターニュ地方では道路標識は全てフランス語とブルトン語で併記されている。
今年4月8日、地域言語で教育する私立学校に対して、国語以外の科目を外国語で学ぶ「イマージョン教育」導入法案が国民議会で可決された。ブルターニュ出身の野党議員、モラック下院議員が提出した法案で、マクロン氏が創設した中道与党は反対したが、圧倒的多数で予想外の可決となった。
ところが5月21日、仏憲法院はブルトン語やバスク語によるイマージョン教育をすべての学校で実施するのは「行き過ぎ」と判断され、法案の一部が修正となった。これにモラック議員率いる法案支持派が抗議デモを行い、憲法院支持派もデモで対抗し、一気に国民の地域言語への関心が高まっている。
(A)