深刻な住宅難のフランス


地球だより

 フランスは昨年1年間の失業者数が過去最高の330万人に達し、昨年の年初に失業率低下を公約した左派政権への批判が高まっている。今や貧困層の拡大は社会問題化しており、劣悪な生活環境で暮らす人々も増えている。

 ホームレス救済に生涯をささげ、国民が敬愛する人物アンケートで長期にわたりトップだった故ピエール神父のことが最近、話題になっている。理由は同神父がホームレス救済のメッセージを1954年2月1日にラジオで流したからだった。当時の反響は予想をはるかに上回るもので、本格的なホームレス救済運動がスタートした。

 それからちょうど60年後の今日、フランスの貧困層の住宅事情は劇的に改善されたのかを検証する仏メディアは多い。60年前、バラック生活していた女性が寒波で凍死し、そのことをピエール神父はラジオで訴えた。しかし、今でも凍死するホームレスはいる。

 ピエール神父が創設した人道援助団体「エマウス運動」の年次報告書では、今もフランスで350万人の人々が劣悪な住宅環境で生活しており、その中には約14万人強のホームレスも含まれているとしている。

 原因の一つは住宅費の高騰で、大都市では賃貸住宅の家賃が2000年から13年にかけて55%、売り物件では120%と高騰している。その背景には海外からの投資も無視できない。今では中国人実業家がパリのアパートを一棟ごと買いあさっている。

 友人のラファエルさんは2人の子供がいるが、3年前にパリ市内のアパートの家賃が高騰し、西郊外30キロの町に引っ越した。彼は「パリ市内の不動産の多くは外国人投資家の投機の対象になっていて、貧困層は追い出されている」と嘆いている。ピエール神父が生きていれば、どう思うのだろうか。

(M)