テロでのSNS悪用防止 仏国際対策会議で宣言を採択


 インターネット交流サイト(SNS)の悪用に対する対策会議がパリで15日に開催され、各国政府が法整備を進めるとともに、IT企業の対応策強化など官民協力を確認する「クライストチャーチ宣言」が採択された。ただ、米国と中国の政府関係者は不在で法的拘束力もなく、技術面で困難もあり、実効性に疑問の声も挙がっている。

アーダーン首相(左)とマクロン大統領

15日、パリで記者会見するニュージーランド(NZ)のアーダーン首相(左)とフランスのマクロン大統領(EPA時事)

 同会議は、今年3月にニュージーランド(NZ)のクライストチャーチのイスラム教モスクで白人男性が銃を乱射し、51人が死亡した事件で、犯人の男が犯行の実況映像をSNS上に流し、拡散したことなどを受け開催された。NZのアーダーン首相はじめ、マクロン仏大統領、メイ英首相ら各首脳、および日本を含め18の国・機関とIT企業8社が宣言を支持した。宣言は、テロリストや過激主義者によるSNS悪用を防止するため、各国政府が適切な法整備を進めることを確認するとともに、SNSを提供するファイスブックやインスタグラムなどIT企業側も危険な投稿を「即時かつ永久的に削除」する態勢を整え、削除基準の透明性も高めるとしている。

 議長国を務めたフランスでも、度重なるイスラム過激派によるテロが発生し、SNSを利用してテロを助長する危険思想や暴力的な投稿の拡散が問題になっている。ただ今回、IT分野で世界的シェアを急速に拡大する中国の政府や企業は参加しておらず、会議に参加したグーグルやアマゾン、フェイスブック、ツイッターなど巨大IT企業を抱える米国政府も宣言に賛同していない。

 NZは4月10日の議会で、銃規制法を修正する法案を、ほぼ全会一致で可決し、半自動小銃の販売や保有を禁じる法律が施行されている。アーダーン氏は今回、声明で「クライストチャーチのような悲劇を起こさないための具体的な措置を講じた」ことを強調した。マクロン氏は「自由で開かれたインターネット環境を構築する必要があるが、われわれの価値観と市民も守られるべきだ」と述べた。しかし、SNS提供側は、今のシステムでは事前に掲載を止められず、また、危険な内容を発見するための監視体制を強化しても、一度は掲載されてしまう。そのため専門家からは、他の方法の検討が必要だという指摘も出ている。