移民危機と「文化防衛論」
6月中旬より米墨国境での不法移民親子の引き離しが米国で問題化した。この問題に関して考えているうちに、トランプ政権を成立させた「トランプ主義」と三島由紀夫の「文化防衛論」との共通性に気付いた。つまり、理性主義以前の精神的、文化的“共同体”の防衛である。
この「親子引き離し」問題に関しては日本でも報道されているように、トランプ政権の不寛容政策のために極端になっている部分は否定できないが、不法移民の親が裁判中は子供を米国保健福祉省が預かるというのは、クリントン、オバマ政権が決めたものである。今年は極端な状態が起きて政治問題化したため、トランプ大統領は応急処置の一環として不法移民親子を軍事基地に収容するように命じた。これも実はオバマ政権でも一回は行われた政策なのだが、その時の収容人数は7000人だった。今年は2万人以上の収容が必要だという。つまりオバマ時代最悪の年の3倍もの不法移民が米国に殺到しているのである。
これは白人プロテスタントの共同体としての米国の危機である。実際、米国の保守派の間では、カトリック教団が同問題に批判的なのはカトリック系が多い南米系移民を増やすことで、米国でのカトリックの影響力を増そうとする陰謀との意見が広まっている。そのためかカトリック信者であるバノン氏が、保守派枢機卿等と協力してフランシスコ教皇を退位に追い込もうとしているという噂(うわさ)も流れている。
この情報は『英霊の聲』という作品で三島由紀夫が左翼以上に厳しい昭和天皇批判を行ったことを思わせる。他にもフランシスコ教皇は性的少数者(LGBT)に寛容な発言を行う等、宗教者失格である。バノン氏には頑張っていただきたい。
ただ、カトリック教団だけではなく共和党支持の宗教保守派の一部にも同問題には批判的な宗教者がいるという。宗教といえども文化“共同体”の同一性が保たれて初めて成立する。そのことをよく理解してほしいと思う。
宗教だけではない。人権も同様である。
国連人権理事会が同問題に関して批判した翌日に米国は同理事会を脱会している。表面上はパレスチナ問題が主要因であるが…。
どうも人権も理性主義の見地から文化“共同体”を破壊するものになっているようだ。人権も文化“共同体”同一性保持の範囲内でのみ認められるべきだと思う。
また国際機関等も国際主義、理性主義の見地から文化“共同体”を破壊するものになっている。日本も国連人権理事会等を脱退するくらいでよいだろう。
米国の国連人権理事会脱退から数日後に、今まで難民に寛容だった欧州連合(EU)も政策転換を表明している。世界は国際主義的見地から移民、難民に寛容な方向から、文化“共同体”防衛論の方向にシフトしつつある。
この流れを日本人も理解し促進しなければならない。安易な人権主義的見地から移民、難民の保護等を考えるべきではない。突き放す良い意味の冷酷さを、日本人も身に付けるべき時だろう。