「公明」に外交戦略、中韓とのパイプ役を強調

慎重を要する対中傾斜

 公明党の機関誌「公明」3月号は特集「日本の外交戦略と積極的平和主義」を載せた。巻頭で「中韓とのパイプを生かし世界の平和と安定に貢献」と題し、山口那津男代表がインタビューに答えている。

「日本の外交は日米同盟が基軸というのは大前提であるが、特に中国や韓国は重要な隣国であり、関係を良好にしていかなければならない」

 このように山口氏は前置きした。日米関係は、特に政権にあっては首相、外相、防衛相のポストを持つ自民党のアピールに及ばず、政権復帰後の安倍政権に執拗(しつよう)な「右傾化」批判を加えた中韓との関係で一役買うつもりだ。が、中国にはそれだけではない思い入れを語った。

「国交正常化に先立って、公明党の創立者である池田大作SGI(創価学会インタナショナル)会長が1968年9月8日に日中国交正常化提言を発表したことが中国側の強い関心を呼び、正常化の大きな一因となったという経過がある」

 当時は冷戦時代で、敵対する米国とソ連(現ロシア)の超大国が対峙(たいじ)。一方で共産主義国同士の中ソが対立(60年)、公明党・創価学会と犬猿の仲の日本共産党は中国共産党と決裂(67年)した。国内外で中国と結ぶ「敵の敵は味方」の機運があり、「提言」は時流に乗ったものだ。

現在は北朝鮮の核・ミサイル開発が大きな脅威となる一方、中国も膨張主義的な海洋進出を図っている。山口氏は昨年の中国党大会後の対話集会に招待され、汪洋副首相と会談した。

「北朝鮮の関連では『過去において血で固めた関係があったが、核問題によって関係が悪くなり反目し合うようになった。北朝鮮の核保有に断固反対する』とも述べていた」と、中国側の姿勢を伝える。

さらに山口氏は、中露と「非核化に向けて連携を強めて解決していこうとの共通項は保たれている」と強調し、国連制裁を軸にした国際的結束を求めた。

一方、「一帯一路」については、「人類運命共同体で、協調路線を取ろう」という戦略の表れと見ており、「これは中国の孤立的な戦略というよりも、もっと開放的なものと捉える方が適切ではないか。日本は自由で開かれた『インド太平洋戦略』を掲げているが、これも対抗的、孤立的なものではない。とすると、日本の戦略と中国の構想は、政治体制こそ違うが、どこかで接点を持ち得るはずだ」と楽観的だ。

南シナ海問題など、サラミスライス戦略と呼ばれる中国の力による現状変更などには触れておらず、「一帯一路」で対中傾斜が過ぎぬように慎重を要する。

同特集で、「新時代『共創』の日中関係へ」を書く熊本学園大学教授・大澤武司氏は、両国関係の推進を唱える。その立場にしても、「17年6月、安倍首相は『一帯一路』への協力を初めて対外的に表明し、中国外務省も『歓迎』を表明した。ただ、『一帯一路』自体、先行きは不明だ」と述べ、事業の中止や延期、軍事転用への懸念などで「関係国の不信も根強い」と語り、“個々のプロジェクトの厳密な吟味”を説いている。

編集委員 窪田 伸雄