米で新構想、無人機で北朝鮮ミサイル迎撃

 北朝鮮の核・ミサイル開発が進展していることを受け、米国で無人航空機を使って北朝鮮の弾道ミサイルを破壊する構想が提案されている。北朝鮮の弾道ミサイルを発射直後の「ブースト段階」で、無人機が空対空ミサイルで迎撃するという構想だ。発射直後に撃ち落とすため、現在のミサイル防衛態勢では迎撃が難しい「ロフテッド軌道」での発射などにも対応できる。(編集委員・早川俊行)

MQ9リーパー

ゼネラル・アトミックス・エアロノーティカル・システムズ社製の大型無人航空機「MQ9リーパー」(米空軍提供)

 この構想を発案したのは、レーガン政権で弾道ミサイル防衛機構科学技術部長を務めたレオナード・キャブニー博士。無人機製造大手「ゼネラル・アトミックス・エアロノーティカル・システムズ」とシンクタンク「ハドソン研究所」が、構想の実現に向けて関係機関に働き掛けている。

 構想は、無人機で北朝鮮を領空外から監視し、赤外線センサーで弾道ミサイルの発射を探知したら、搭載した長距離空対空ミサイルで迎撃する、というものだ。

 弾道ミサイルに対する現在の日本の防衛態勢は、大気圏外を飛翔中の「ミッドコース段階」で撃ち落とすイージス艦搭載の迎撃ミサイル「SM3」と、大気圏に再突入して落下してくる「ターミナル段階」で迎撃する地対空誘導弾「PAC3」から構成され、ブースト段階で破壊する能力は持ってない。

 ブースト段階は、①ロケットエンジンの燃焼で高熱を発するため探知しやすい②猛スピードで落下してくるターミナル段階などと比べ速度が遅い――ことから迎撃しやすいという利点がある。

 米ミサイル防衛局は、ブースト段階での迎撃手段として無人機に高出力レーザー兵器を搭載することを検討している。だが、ハドソン研究所によると、レーザーをミサイルの迎撃手段として実用化するには少なくとも5年以上かかる。

 これに対し、無人機に空対空ミサイルを搭載して迎撃する構想は、既存の技術・装備を利用するため、2年以内の実用化が可能で、費用も1基1000億円超の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」などと比べ大幅に安く済むという。

 現在の日本のミサイル防衛態勢では、高い高度で打ち上げるロフテッド軌道や多弾頭ミサイルへの対応は難しいが、ブースト段階ならこれらも克服できる。また、北朝鮮のミサイルを発射直後に破壊すれば、破片は日本ではなく北朝鮮か日本海に落下する。

 ハドソン研究所は、この構想を日米の共同プロジェクトとして推進していくことを提案。同研究所が7月にサンディエゴのゼネラル・アトミックス本社で開催した会議では、8月に防衛相に就任した小野寺五典氏が基調講演するなど、日本側も構想に関心を寄せているとみられる。

■米ハドソン研究所上級研究員 アーサー・ハーマン氏に聞く