憲法への自衛隊明記 違憲論に正々と終止符を

首相の9条「追加」提案

 先月3日の憲法記念日の朝、読売新聞の1面の見出しに瞠目(どうもく)させられた。そこには『憲法改正 20年施行目標 9条に自衛隊明記』と大書されていたからだ」

 記事によれば、インタビューに応じた安倍首相は、憲法改正を実現して2020年の施行を目指す方針を表明。改正項目については現行の9条1項、2項を維持した上で、憲法に規定がない自衛隊に関する条文を追加することを最優先させる意向を示した」

 首相は「自衛隊に対し国民の信頼は今や9割を超えている一方、多くの憲法学者は違憲だと言っている。違憲かもしれないが、何かあれば命を張ってくれというのは余りにも無責任だ。9条については平和主義の理念はこれからも堅持していき、1項、2項をそのまま残し、その上で自衛隊の存在を書き加える。自衛隊を合憲化することが使命ではないかと思う。政治は現実であり、結果を出していくことが求められる」《一部抜粋》と述べている」

 これまでも国防の使命の重要性を説き、自衛隊員に誇りを持つよう要望し、口先だけで苦労をねぎらうような、歴代の首相や防衛大臣などの政治家に比べると、ここで「自衛隊違憲論」に区切りをつけるという安倍首相の決意は特筆に値するものだと思う」

 ただ、腑(ふ)に落ちないのは、9条1項の戦争放棄の規定を維持するのは諒としても、2項の「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」をそのまま残すということである。「前項の目的を達するため」(いわゆる芦田修正)があろうとなかろうと、そのまま読めば自衛隊は違憲であると解するのが憲法学者でなくとも普通であろう」

 そのため政府は、自衛隊は専ら日本の防衛のためのものであり、2項が保持を禁止した「戦力」ではない「実力」、つまり防衛力であるとし、「自衛のための必要最小限度の実力」の保持は憲法違反ではないという何とも奇妙な牽強(けんきょう)付会(ふかい)の説明を繰り返してきた」

 この2項を残したままの9条に、首相は一体どのように自衛隊を明記する追加条項を考えているのであろうか」

 早くも自民党内では9条の3項として「2項の規定にかかわらず、自衛のための自衛隊を設ける」とか「2項の規定は、防衛のための自衛隊の設置を妨げない」などの案が出ているようだが、どれも弥縫(びほう)の類いに過ぎぬように思える。2項の規定と現実との矛盾に無理に整合性を与えるようなことになれば、これからも解釈改憲を積み重ねることになりはしないか。それに「自衛隊は軍か否(いな)か」の神学論争も依然として続くことになるのではないかと懸念が尽きない。

「憲法改正草案」を基に

 憲法施行から70年、憲法成立当時の事情については、当事者の証言や関係資料・文書に基づいて書かれた書籍も汗牛(かんぎゅう)充棟(じゅうとう)で、ほぼすべてが明らかになっている。マッカーサーが国際情勢の現実を無視し、虚偽に満ちた内容の憲法の前文と9条2項を日本に強要して、日本が再び米国の脅威にならないようにすることが目的であったことは周知の事実である」

 自民党にはサンフランシスコ平和条約発効から60周年となる平成24年4月28日、すなわち主権を回復した記念すべき日に合わせて発表した「日本国憲法改正草案」があるではないか」

 筆者は現行憲法の瑕疵(かし)を改めたこの改正草案の方を基に改憲論議を進め、自衛隊を国防軍と規定することにより、「自衛隊違憲論」に正々と終止符を打つべきだと考える。