米国防長官の来日 同盟重視を確認できるか
平和研が反撃力を提言
プラトンは「富が保証する快楽を何よりも欲し、金儲け仕事をするのが本来である人物が思い上がって、その素質もないのに国家の統治者となれば国を滅ぼす」と戒めている。
金がすべてで、如何(いか)に儲(もう)けるか。合法であれば手段を選ばない。そんな阿漕(あこぎ)なビジネスを全く恥ずかしいとは思わぬ輩(やから)には品位のかけらも感じられないのである。不動産王ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任して2週間。多くの米国民が“婆(ばば)”を掴(つか)まされたと臍(ほぞ)を噬(か)んでいるのではないだろうか。
「米国第一」を標榜(ひょうぼう)するトランプ米大統領の政治は「金儲け・ビジネス政治」と揶揄(やゆ)されるように、つまるところすべてが損か得かの価値観に基づいているのだ。
トランプ大統領は選挙中、日本に対して「なぜ日本は在日米軍の駐留経費を全額負担しないのか」「日本は米国を守らないのに、なぜ米国は日本を守らねばならないのか」と、在日米軍の撤退や日米安保条約の見直しをちらつかせた。
これは全く的外れな批判だ。日本は在日米軍駐留経費や米軍再編関係経費などで年間約7600億円を負担し、他の同盟国と比べても日本の負担は突出している。この中には日本に負担義務のない基地職員の労務費、施設整備費、光熱水費、訓練移転費、娯楽・保養施設費などのいわゆる「思いやり予算」として1899億円が含まれ、まさに至れり尽くせりではないか。
そして安保条約第6条で、米国は極東の平和と安全のために日本の基地を使用することが許され、米国は日本を防衛する義務と引き換えに、日本防衛のため以外にも日本の基地を使用する権利を得ているのである。
換言すれば、日本は米国に対して日本防衛以外の目的で基地を使用させる義務を負っていることになり、決して片務的で不公平な同盟ではない。
トランプ大統領の日米同盟に対する皮相的見解や、トランプ政権の外交政策が模糊(もこ)として不透明なことが懸念される中、世界平和研究所(会長・中曽根康弘元総理)が日本政府への刮目(かつもく)すべき提言を発表した。
「通常戦力による反撃能力を段階的に整備すべき」として、巡航ミサイルなどを保有して日本独自の抑止力を持つべきだとした。これはミサイル攻撃を受ける前に相手国の基地を攻撃する策源地攻撃能力の保持を政府に求めたものだ。因(ちなみ)に政府は自衛のための敵基地攻撃能力の保有について、合憲かつ合法としている。
すでに韓国は北朝鮮のミサイルを発射前に無力化するため、北朝鮮全域を攻撃できる射程距離1500㌔の地対地ミサイルや巡航ミサイルを配備、増強していることを特記しておきたい。
尖閣に安保適用確認を
次に「我が国の防衛力を強化すべき」として、我が国を取り巻く安全保障環境、主要国における防衛努力の状況を考慮し、当面は対GDP比1・2%を目標水準とした防衛費を追求すべきとした。
それから「日米同盟と尖閣諸島の関係についても、再度確認すべきである」として、米国政府との間で日米安保条約第5条が尖閣諸島にも適用されるということが公式に確認されるべきであるとした。同盟国としての米国の信頼性が揺らぎ始めているのだ。
きょう、誇り高き海兵隊の元大将マティス米国防長官が来日する。何よりも日米同盟の重要性を理解しているであろう。稲田防衛相との会談を注目したい。