効果でない小学校英語 国語力と教師の質高めよ

英語嫌いな生徒を量産

 今日、世界は地球的規模で物事が運ばれている。その中で活躍するであろう若者への英語教育が必要なのは当然であるが、このような課題に現在英語教育が果たして応えられているかといえば「スキル」「コミュニケーション」「言語力」という本来の機能を果たしているようには思えない。

 中学・高校・大学という長期間の学習にもかかわらず、英語を本当に理解できず、思うように話すことも聞くこともできないのはなぜか。中学から高校に掛けての英語教育に問題があるのではなかろうか。生きた英語でなく死語的な役に立たない英語、そして受験のための英語と、英語を好きにさせることより、嫌いな生徒を量産しているように思われる。その証として多くの者が英語コンプレックスを持っていることである。

 賛否両論の中で、文科省は東京五輪・パラリンピック開催が決まりグローバル化に対応した人材育成が急務として英語教育の充実として、小学校からの教育が必修として3年生からの外国語活動(英語)の開始と5年生からの教科化、中学校での英語での英語授業導入、高校では発表・討論などの英語能力向上を視野に改革を進めている。

 しかし、肝心なのは小学校での過密なカリキュラムへの導入、ネイティブな英語を話せて、英語指導ができる質の高い教師を養成することが第一で、きちんと指導ができる教師でなければ初期の段階で間違った英語を刷り込まれることになる。

 日本人は「聞く」「話す」力が極めて弱いと酷評されているが、たしかに英語専門の教師でも通訳ができなかったり、アメリカで話が通じなかったりと、「使える英語」教育が施されていなかった欠陥である。

 国が小学校英語の検討に着手したのは昭和61年で「英語教育が長期間学習しても極めて非効率であり、改善する必要がある」と、臨時教育審議会が答申。平成26年有識者会議が「アジアトップクラスの英語力育成」を目標に掲げ、具体的な学習到達目標を定めて小学校から一貫した教育に取り組むなどとした提言書をまとめているのだが、果たして現在、改善されているのだろうか。

 先日、平成27年度の中学3年生と高校3年生を対象にした英語の「聞く」「読む」「書く」「話す」の4技能調査の結果が発表になったが、中・高とも全技能が国の目標に届かなかったようである。中学3年生は、小学校での英語活動が始まった最初の世代で、授業時間や習得する単語数も増やされたのに効果が上がらなかったのである。

系統的抜本的な改革を

 小学校で英語教科化にするなら、中・高の授業にどのようにつなげるかを明確にすべきで、英語教育の充実に向けての課題が多く残されている。

 グローバルな人材を育成するためには英語教育一辺倒だけではなく日本人として誇りを持てるよう、伝統・文化を学ぶ機会として、さまざまな教科指導も重要である。

 東京都は新年度から、五輪・パラリンピックを教材に自国の歴史を学んだり、異文化交流を行ったりする教育プログラムを各学校で実施することが決まっている。

 国際社会のなかでこそ、英語教育だけではなく各教科ともに付け焼き刃でなく系統的かつ抜本的な改善・改革が必要であり、特に国語力を高め日本を深く理解できる教育を忘れてはならない。