4月開校の宮城県登米総合産業高等学校

学科を越え広く産業を学ぶ

 宮城県北部の米の名産地登米(とめ)市に、県登米総合産業高等学校(鈴木琢也校長)が今年4月に開校した。少子化が進む中、上沼高校、米山高校、来谷工業高校の3校と登米高校商業科を統合し、新たに福祉科を加えた県内初の総合産業高校だ。地域と密着した専門系高校のモデルケースを目指す。(市原幸彦)

地元に貢献する人材育成/3校統合で専門系のモデルに

4月開校の宮城県登米総合産業高等学校

宮城県登米総合産業高校(同校提供)

 同校は農業科、機械科、電気科、情報技術科、商業科、福祉科の6科で構成。定員は各40人の240人。今年度の1年生の生徒数は225人。15人の定員割れだが、以前と比べずっと定員に近づいた。

 「地域連携と学科間連携を大きな特徴としています。地域企業の方を指導者に招いての実習や長期のインターンシップに取り組み、高い専門性と実践力を身に付けさせます」と秋山幸弘教頭。

 同校の設置に当たっては、地元企業を中心とした雇用の増進を目指そうと、平成25年8月に登米市、商工会、経済同友会、教育関係者、地元企業によって「登米地域パートナーシップ会議」を立ち上げ、協議を重ねてきた。

 学習の特徴について、秋山教頭は「学習指導要領による教科科目にとらわれず、県教委とも協議し独自に学校設定科目を設けました」と語る。

4月開校の宮城県登米総合産業高等学校

1年生が「産業基礎」で栗原・登米地域の企業見学(同校提供)

 学科の垣根を越え、相互に他学科の内容を学び合うが、「社会の変化や産業の高度化・多様化に伴って必要とされる複数の専門分野の知識・技能や独創的な発想力、豊かな創造性を身に付けさせます。他学科の資格取得の道も視野に入れています」とも。

 1学年の学校設定科目は「産業基礎」で、他の5学科の基礎事項を年間各8時間ずつ学習し産業全般を学ぶ。例えば、農業科の生徒であれば農業科以外の機械科・電気科・情報技術科・商業科・福祉科の授業を8時間ずつ学ぶことで、六次化の意識を持たせたり、農業機械にも目を向けさせる。

 地域の人々の講話も聴く。4月に産業全般についての講話を聴き、12月には農業・工業・商業・福祉分野の講話を学年全体で聴く。また、夏休みなどは「企業見学」を実施。この7月には12のコースに分かれ、栗原・登米地域の企業を中心に見学した。

 2学年前半は「総合選択システム」で他学科の専門事項を学ぶ。各学科から選ばれた科目(農業科の生物利用、機械科のものづくりと図面製作、商業科のビジネス実践など計14科目)の中から選択して学び、興味・関心の幅を広げる。

 2年生後半~3学年は「起業実践」で実践力を学ぶ。異なる学科の生徒6人がグループを組み、企業関係者などから提案される課題(例えば、地元産品を使ったオリジナル商品の開発、商店街の活性化策など)の解決に向けて、協力し合う。

 「習熟度別学習」「少人数指導」「チーム・ティーチングによる指導」など、個人に応じた指導も併行して行う。「希望する進路に応じた進路指導を行い,大学等への進学や100%の就職達成率を目指す」ためだ。

 授業以外にも学校行事としてさまざまな取り組みもある。7月下旬には声と話し方コンサルタント・フリーキャスターの赤間裕子氏を講師に招き、3学年対象にボイス・トレーニングセミナーを行い好評だった。このような取り組みは生徒たちに良い刺激にもなっているようで、以下のような声が寄せられている。

 「宮城県初の総合産業高校の生徒として、私たちが新しい文化や歴史の土台を築き上げていくことにワクワクしています」(中村楓さん、園芸ビジネス科)。

 「資格取得にも力を入れているので、卒業までにたくさんの資格に挑戦することもできます。ものづくりに興味を持って、将来の目標に向かってしっかりと取り組みたい」(布澤明日香さん、情報技術科)。

 秋山教頭は「他の専門分野も身につけたうえでの産業スペシャリストを目指します。所属する学科の専門性を深めながら、他の産業についても、広く学ばせて地元の産業界に貢献する人材を育成したい」と意欲をみせている。