格差を埋める「幸せ」


 英王室からグッドニュースが届いた。ウィリアム王子とキャサリン妃夫妻に第2子の女の子が誕生したのだ。

 王子夫妻が笑顔をたたえながら病院前で赤子を抱えて映る写真が世界に流れた。ウィリアム王子夫婦の喜ぶ姿は幸せを絵に描いたように華やかだ。プリンセス誕生の写真を見る私たちも笑顔がこぼれてくる。幸せであることの喜びを体いっぱいにあふれさせるキャサリン妃の姿はとても印象的だ。

 一方、目を地中海に移すと、北アフリカ・中東諸国の紛争地から逃げてきた難民たちであふれる船舶、それを救済しようとするイタリア警備船が映った写真が流れてきた。地中海では既に数千人の難民が溺れ死んだという。それもここ数年でだ。「地中海は墓場となる」と警告を発したマルタのジョセフ・ムスカット首相の言葉は久しく現実となっている。

 昔は幸せを享受している人々は特権階級であり、支配者階級だった。彼らは自身の幸せが他の犠牲の上に成り立っていることを薄々知っていたから、自身の幸せに没頭し、恣意的に「責任」を感じないように生きてきた。そのような時代は終わった。

  幸い、自分の富を他の貧しい人々の救済に充てたい、といった抑えることのできない衝動を感じる幸せな人々が出てきた。貧富の格差、幸福の格差に人々は昔以上に敏感となってきたからだ。数年前の米ニューヨークの「反ウォール街デモ」だけではない。世界の至る所で貧富の格差是正を訴える人々のデモや集会が行われている。幸せな人々は、自分たちだけが幸せであることにもはや耐えられなくなってきたのだ。

(O)

(ウィーン在住)