危うし“アベノミックス” 消費購買力伸ばす政策を
国民に厳しい日銀施策
いわゆる「三本の矢」を柱とする安倍現政権の経済活性化政策アベノミックス、失敗に終わるとまではまだ断定できる段階ではないが、おそらくはうまくいかないのではないか―と私は推測している。
なぜか―現政権の経済運営策が“あしき意味での資本主義型経済運営”の性格を色濃く帯びている(もちろんかたちを変えてはいるが)と理解せざるを得ないからである。
昭和30年代後半から40年代前半にかけての日本のすばらしい経済成長を想起してみるがいい。積極的な財政投融資で企業活動の基盤を強化するのと併行して大胆な減税で国民大衆の購買力を側面から強化し、両々相まって日本経済は当時としては驚異的とまでいうべき高成長を実現し、経済大国としての基盤を固めた。
もとより現今の日本経済には当時とは基盤条件が違う。だが、運営策さえ適切なら、安定的に成長する条件は決してゼロではない。そしてその条件とは国民多数の消費購買力が高率ではなくても着実に伸びていく基本条件を政策でもって早急に整えることを措いて他にはない。
ところが、現政権と元財務官僚を総裁にする日銀の施策は、これとは全く逆でしかない。消費税増税は中堅所得層以下の購買力を減少に直結し、日銀のゼロ金利政策による物価押し上げもまた中堅所得層以下の購買力減退に同じく直結する。かつ、ささやかな預貯金の利子所得もほとんどゼロに等しい。富裕層にとっては痛くもかゆくもなかろうが、中堅所得層以下の国民多数にとっては、これも厳しい。
国民の預貯金がいくらあるのか、正確な数字は筆者は知らないが、400~500兆円程度の残高はあると推定して間違いなかろう。仮に、これに年率2%の利子がつくと想定しよう。預貯金400兆円の年2%の利子は、年額8兆円になる。3年これが続くと想定すれば単利計算でも24兆円、複利計算ならもっと多額の購買力が、失われている計算になる。これも、富裕層にとっては痛くもかゆくもなかろうが、国民の多数を占める所得層にとっては大いにこたえることだろう。
円の対外レートの落勢は、輸出産業にとっては歓迎できる。海外に展開している諸企業にとっても海外で稼いだ外貨を日本に送金すれば相応の利益増になる。その半面、日本の経済運営や一般庶民の日常生活に不可欠の諸物資の輸入価格(円換算)の上昇は、これも厳しい。
経済政策に不安あり
これらの観点から判断して、私は、現政権の経済政策はうまく運んでいないと認識している。経済指標からしても、経済運営策が着実に効果を挙げているのであれば、円の対外レートも堅調、株価もときどきの変動は別として中期的には手堅く利するはずだろう。
ところが円は弱く株価はニューヨーク追随の傾向が変わらない。これらも、アベノミックスの今後に心配が大いにあることを示唆している、と私は考える。