7・1閣議決定の曲解 「イスラム国」関与はない

我が国防衛の自衛措置

 安倍内閣の7月1日閣議決定「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」は、集団的自衛権に関係する部分だけと思っている方が多い。

 今回は、切れ目のない防衛を考えた場合の15事例の中に個別的自衛権、グレーゾーン、集団的自衛権、集団安全保障に関するものがあり、それらを検討したものである。

 ポイントは、「武力攻撃に至らない侵害」については、近傍に警察力が存在しない場合や警察機関が直ちに対応できない場合の、自衛隊の治安出動や海上警備行動の早期の下令や手続きの迅速化等について具体的に検討したこと。

 「国際社会の平和と安定への一層の貢献」については、他国が「現に戦闘行為を行っている現場」ではない場所での支援活動は、他国軍隊に対して必要な支援活動を実施できるよう法整備をする。状況変化により支援活動を実施している場所が「現に戦闘行為を行っている現場」となる場合、直ちにそこでの支援活動を休止・中断するなどである。

 次に憲法第9条の下で許容される自衛の措置として、「武力の行使」の新3要件(①我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること。②これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと。③必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと)は、従来の政府見解の基本的な論理に基づく自衛のための措置として憲法上許容される。

 これら「武力の行使」は、国際法上は集団的自衛権が根拠となる場合があるが、憲法上はあくまでも我が国の存立を全うし、国民を守るため、すなわち我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置である。

 実際の自衛隊による活動実施には根拠となる国内法が必要で、法案の準備ができ次第国会に提出する。

マスコミが虚偽報道

 安倍総理は、この閣議決定を受けて記者会見を行った。

 総理は、集団的自衛権に関して、現行の憲法解釈の基本的考え方は、今回の閣議決定においても何ら変わることはない。海外派兵は一般に許されないという従来からの原則も全く変わらない。自衛隊がかつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことはこれからも決してない。外国を守るために日本が戦争に巻き込まれるという誤解があるが、そのようなこともあり得ない。

 日本国憲法が許すのは、あくまで我が国の存立を全うし、国民を守るための自衛の措置だけで、外国の防衛それ自体を目的とする武力行使は今後とも行わない。

 今回の閣議決定によって日本が戦争に巻き込まれるおそれは一層なくなっていく。日本が再び戦争をする国になることは断じてあり得ない。平和国家としての日本の歩みはこれからも決して変わらない。むしろ、その歩みをさらに力強いものとする。

 憲法の規範性を何ら変更するものではなく、新3要件は憲法上の明確な歯止めとなっている―と述べた。

 ところが、某新聞は米国のシリア領内の「イスラム国」で空爆を開始したことを捉え、米国の戦争への日本の関与について、「当面は人道支援。集団的自衛権行使の法整備が終われば戦闘地域でも活動可能」と相変わらずの虚偽報道を行っている。

 こうした意図的な出鱈目(でたらめ)報道に惑わされないためにも、閣議決定、安倍総理の記者会見にはしっかりと眼を通しておきたいものだ。