米大統領 「イスラム国」を過小評価、「二軍チーム」と断定

 イラクでイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」の勢力拡大を許した要因の一つとして、オバマ米政権がその脅威を過小評価していたことが問題視されている。オバマ大統領は今年1月、イスラム国をスポーツの「二軍チーム」に例え、国際テロ組織アルカイダのような深刻な脅威には発展しないと断定していた。
(ワシントン・早川俊行)

実際はアルカイダ級の脅威

600

14日、米マサチューセッツ州で、声明を発表するオバマ大統領(AFP=時事)

 イスラム国は1月の時点で、イラク西部ファルージャを支配下に置くなど勢力を広げていたが、オバマ氏はニューヨーカー誌とのインタビューで、イスラム国を次のように評価していた。

 「二軍チームがレイカーズのユニホームを着たとしても、(レイカーズのスター選手)コービー・ブライアントにはなれない」

 つまり、アルカイダを米プロバスケットボール協会(NBA)の名門レイカーズに例えるなら、イスラム国は取るに足らない二軍チームだと過小評価していたのだ。

 その上で、オバマ氏は「米本土にテロを計画する(アルカイダの指導者)ビンラディン容疑者のネットワークと、地域の権力闘争や宗派対立に関与するジハーディスト(聖戦主義者)は違う」と述べ、イスラム国は米国の直接的脅威にはならないとの見通しを示した。

 だが、イスラム国はシリア、イラクの支配地域を拠点に対米テロ攻撃を仕掛ける可能性が指摘されるほどまでに勢力を拡大。野党共和党からは「イスラム国は米国の直接的脅威だ。彼らは米同時テロ当時のアルカイダより強力だ」(ピーター・キング下院議員)との見方まで出ている。

 ブッシュ前政権で副大統領を務めたディック・チェイニー氏は、オバマ氏がイスラム国を「二軍チーム」と評価したことについて「知識の欠如を示すものだ」と批判。「大統領はおそらく情報機関の報告を読んでいないのだろう。あるいは、大統領が受け取る情報の質に問題があったのかもしれない」と指摘した。

 オバマ氏がイスラム国を過小評価した正確な理由は定かではないが、オバマ氏は9日の会見で「ここ数カ月のイスラム国の進展、動きが情報機関の見積もりより早いことは間違いない」と述べ、情報機関が提供する情報の質に不満を示した。

 一方、シリア内戦に対するオバマ政権の不作為が、イスラム国の台頭を許したとの指摘も出ている。ヒラリー・クリントン前国務長官はアトランティック誌とのインタビューで、オバマ政権はイスラム教徒や世俗主義者などが混在するシリア反体制勢力を「信頼できる戦闘部隊にまとめるための支援を怠った」と批判。これにより「大きな真空が生まれ、聖戦主義者たちがそれを埋めた」との見方を示した。

 また、ワシントン・タイムズ紙によると、昨年5月までオバマ政権で国防筆頭副次官を務めたサミュエル・ブラネン氏は「シリアに武力行使しないという1年前の決定がもたらした結果の一つは、イスラム国が主要プレーヤーとなったことだ。アサド政権がさらに穏健派(の反体制勢力)を排除したことで強硬派が台頭した」と指摘した。