中国にどう対処するか 「静かな日本」は卒業しよう
中国の習近平国家主席が訪韓し、中韓反日スクラムを一層固めた。日本はどう対処するか。即効薬は見つからない。
「戦争のできる国にするな。中韓との首脳会談へ踏み出せ」とさけぶ新聞がある。
だが、特に「核心的利益」を振りかざす中国は、日中首脳会談開催に、尖閣諸島を巡る領土問題の存在を認めることなどを条件づけている。大原則で妥協して首脳会談を開催してもらっても、長い目で見てマイナスだろう。
首脳会談とレベルが全く違うが、私もささやかな体験をした。
約二〇年前、私は新聞社で国際会議運営を担当し、アジア太平洋の将来に関する討論会を企画した。中国を気にして台湾人は招き難い時代だったが、アジアのホープ視されていた陳水扁・台北市長(のち総統)に参加を要請、快諾を得た。中国からは、外務省国際問題研究所長など三人の参加OKをとりつけた。ところが、中国大使館から「台湾の参加をやめなければ、中国から参加させない」と圧力がかかった。繰り返し来社、談判された。 苦しかったが拒み通した。「陳氏招請の大原則は変えられない」。上司の重役も支持してくれた。結局、陳氏と中国人参加者の出席セッションをずらす小妥協で、開催直前、中国側が折れてくれた。大型国際討論に参加し、有力新聞社と協力し続けるメリットを選択したのだろう。相手が大原則で譲らないと思えば、メリットや力関係の算段となる。
だから、いま首脳会談を急ぐより、日本がやるべきは、自らの力、経済力、国際政治力、安全保障力を増強すること。経済再建はその柱だ。国際政治力に関してやるべきは、事実と違う中国の主張には断固反論し、世界の理解を得ること。「静かな日本」は完全卒業しよう。
日本が強力で、ゆさぶりがきかず、その力を利用した方が得策と判断すれば、中国が戦術を変え、小妥協でOKする可能性が出る。
また、やるべきは学校で現代史をもっと教えること。客観的に、両論あれば両論教える。大学でも、「よく知らないが日本は中韓に悪いことをしたらしい」という学生が多い。知らないが謝るでは、真の友好にならない。
そして、青少年交流に一層力を入れるべきだ。私は、大学に来て、アジアの田舎の学校で運動会を開く学生研修を実施した。中国の内モンゴルの小学校で終了後、涙もろい女子学生が2人、大泣きして子どもたちと別れを惜しみ続け、出発が遅れた。時は九月で、現地のテレビは抗日ドラマ花盛り。でも、この涙を見た子どもたちは、「あのお姉さんたちは鬼じゃなかったよ」と記憶してくれるに違いない、と思った。
日本には、全留学生の六割、八万人以上の中国人留学生がいる。彼らに、もっともっと日本をよく見て、知ってほしい。真面目留学生も「バイト熱心」留学生も、日本国内をじっくり見に行く余裕と機会は、なかなかないようだ。
ある正月、中国人留学生の希望者を募り、靖国神社に行った。「靖国反対でよいが、一度見てはどうか」。一三人に声をかけ三人が希望した。真面目な三人で、遊就館の展示まで真剣に見ていた。
靖国神社はともかく、夏休みに広島・長崎とか東日本大震災被災地とか、日本の民主主義に関連する場所などを訪れる無料留学生ツアーを、組織できないだろうか。それは将来の日中関係改善のインフラを育てる栄養剤になると思うのだ。
(元嘉悦大学教授)










