人口減少社会の現実、急務の長期ビジョン策定
民間の有識者らでつくる「日本創成会議」の人口減少問題検討分科会(座長・増田寛也元総務相)は5月8日に発表した2040年時点の全国市区町村別人口(推計)は、衝撃的内容だった。なにせ、地方から都市への人口移動が収束しないと仮定すると、全体の約5割を占める896自治体で若年女性(20~39歳)が半分以下に減り、「将来消滅する可能性がある」と分析。そのうち40年時点で人口1万人を切る523自治体に関しては「消滅の可能性が高い」というのだ。
この分析の詳細と人口減少を食い止めるための提言「ストップ『人口急減社会』」が「中央公論」6月号に載った。ちなみに、私の故郷である宮城県色麻町をみると、10年時点で総人口は7431人(そのうち若年女性745人)だが、40年にはそれが4664人(同371人)減ってしまうのだから、「消滅の可能性が高い」自治体である。
日本が抱える最も深刻な問題は人口減少であることは何年も前から言われ続けてきたが、こうした数字を提示されると、改めて人口減少社会の現実の厳しさに愕然とするとともに、まさしくその対策は「待ったなし」の状態にあることを実感する。
そこで、同会議は①国民の「希望出生率」の実現を柱とするストップ少子化戦略②若者に魅力ある地域拠点都市を創成する地方元気戦略③女性と高齢者などの人材活用を推進する女性・人材活躍戦略――を提言する。
いずれも必要な項目だが、最も重要となるのは日本が目指すべき社会のビジョンである。提言は「長期ビジョン」策定の必要性を説いてはいるが、社会の基本単位を「個人」にするのか、それとも「家族」かという、リベラル派と保守派の間で論争となる根本問題について明言していない。それは政府の責務というのだろうが、しかしこの基本が明確でないと、政策の優先順位に整合性がなくなる。
提言には、こうした物足りなさはあるが、具体的な数字を提示することで、政府・行政だけでなく、国民全般に危機感を持たせるという効果は絶大だ。人口減少に対する取り組みの真剣度は危機意識から生まれることを考えると、是非一読してほしい提言である。(敬称略)
編集委員 森田 清策