自然の不思議が子供の好奇心生む
札幌市で環境教育シンポジウム
「持続可能な開発」あるいは「持続可能な社会の構築」といった言葉が頻繁に使われるなど環境保全に対する取り組みが官民で繰り広げられている。そうした中で、これからの環境教育の在り方を論議するシンポジウムがこのほど、札幌市内で開かれた。北海道内のボランティア団体が多数参加する中で身近な環境に気を配ること、自然体験学習の重要性が改めて指摘された。(札幌支局・湯朝 肇)
感性と科学的視点のバランス大切
熟練ボランティアの育成急務
「教室の中で教わっただけでは十分ではない。郊外に出て自分の目で見て確かめてみる。それが自然を観察する力、社会を見る目を養っていくことになる」
5月13日、札幌市内で開かれた環境シンポジウムで、「環境学習フォーラム北海道」の横山武彦代表はこう語って野外学習、フィールド学習の重要性を訴えた。この環境シンポジウムの主催には、環境学習フォーラム北海道のほかに、NPO法人北海道環境カウンセラー協会やNPO法人ネオス、さらに札幌市環境プラザや環境省北海道環境パートナーシップオフィスなどの官公庁が加わった。
開催の経緯について、横山代表は「環境学習フォーラム北海道の前代表で、長年にわたって中学・高校での理科教育や地域での環境活動に携わった藤田郁男さんが今年2月に亡くなり、その功績を偲(しの)ぶと同時に、藤田さんの理科教育、環境にかける思いを今後につないでいくという意味がある」と語った。
藤田さんが環境教育に取り組んだ範囲は非常に広い。理科教師であった藤田さんは学校内の教育だけでなく、野外活動、フィールド学習を頻繁に行っていった。退職後は、現役教師たちを加えて環境学習フォーラム北海道を設立。活動の範囲を広げ、海外での環境支援活動や道内の他のボランティア団体と連携する中でさまざまな支援やカウンセリングを行っていった。
会場には、藤田さんが生前、関わりのあったボランティア団体のメンバーが多数集まった。そうした活動が評価され、藤田さんは昨年、瑞宝小綬章を受章されている。
シンポジウムではNPO法人ねおすの高木晴光理事長が基調講演を行ったあと、「これからの環境教育のあり方」をテーマにパネルトークが行われた。この中で、元旭川東高校校長で環境学習フォーラム北海道の会員でもある河村勁さんは、環境教育について次のように語った。
「環境教育というと教師が生徒にものを教えるというイメージがあるが、自然から学ぶことは非常に多く、教師も生徒と一緒になって学ぶ機会が多い。藤田さんも常々“一緒に学ぶ”ことを強調していた。そういう意味では環境教育ではなく環境学習という言葉がふさわしい」
一方、高木理事長は、自身の体験から「自然体験学習を効果的に行うコツは、“見えるものを見せる”、“見えないものを見せる”“感性と科学的視点のバランス”を踏まえることが大切。自然体験は楽しくなければ心に残らず、また楽しいだけでは身につかない。感性と科学的視点が重要だ」と指摘する。
現在の環境教育、自然体験について、横山代表は子供たちに①疑問を持たせること②自然を読む力を養うこと――の二つの視点の重要性を指摘する。「学校教育では、特に中高の理科教育では“答え”が決まっている。でも、自然は不思議がいっぱい。そうした不思議なことを子供たちに問いかけることで子供たちの好奇心が湧いてくる」というのだ。
他方、高木理事長は自然体験学習の重要性を指摘しながらも、「学習指導要領にも自然体験学習の義務化は記載されているが、現在の教育態勢では絶対に無理」と断言する。その理由として教師の多忙さ、経験不足などを挙げ、そういう視点からも熟練したボランティア要員の育成が早急に求められていると訴える。