結婚・出産教育の欠落、安倍政権の少子化対策

若者に「社会貢献」と伝える

 少子高齢化が進んだことで、生産年齢人口(15~64歳)が32年ぶりに8000万人を割り込んだ。今後さらに就労人口の減少が進めば、社会の活力低下が避けられない。安倍政権は配偶者控除の見直しなど、女性の就労促進を打ち出しているが、根本的な問題は生まれる子供の数の減少だ。背景にあるのは、晩婚化と非婚化で、これを何とかする必要がある。

 「Voice」5月号では、自民党総務会長の野田聖子、同党政調会長の高市早苗と政治解説者の篠原文也が女性の活用や少子化対策などについて論議している(「女性が支える政権の中味」)。この中で、女性2人を相手に、篠原が挑発的な質問をしている。「結婚、出産することが立派な社会貢献であることをしっかりと教えていく必要がある」「若者の意識を変えるために『独身税』のようなものをそろそろ考える時期だと思う」と。

 これに対して、「意識改革というか、教育が大切なのは確か」とする高市が「高齢出産のリスクを含めて妊娠や出産に関する正しい知識が必要」と同調すれば、野田も自身の経験から「晩婚になった理由は、結婚から妊娠、出産というプロセスがどんなものか、学んでこなかった」と反省する。

 結婚・出産についての意識改革が必要と、男性が発言すれば、これまでなら個人のライフスタイルに政治が介入するのか、と一蹴してきた女性政治家(とくにリベラル・左派の政治家)多かったが、賛同の声が上がるのは、それだけ少子化が深刻な政治課題になっているからだ。また、結婚・出産についての教育の欠落については、男性よりも2人ははるかに切実に感じているとも言える。

 ただ、これから結婚・出産教育に力を入れても、就労人口に反映するのは20年はかかる。その間、どうするのか。外国人労働者の受け入れとともに、安倍政権が進めているのが女性の活用で、そこで出ているのが配偶者控除の見直しだ。

 この問題について、高市は理念としては「働き方に対して中立的な税制」と「夫婦が生活の基本単位であることを重視する」税制の二つがあり、まだ議論が必要だが、「夫の配偶者控除で不利になるからといって中途半端な働き方をすると、企業からは一人前の戦力として見なされません」と現状を訴える。

 また、野田は男性の所得が減るとともに、労働人口が減っていることを背景に、「女性も働いてくれないと、日本はもたないというメッセージ」だという。これに対して、篠原は「配偶者控除というのは、専業主婦を国が認めている証しだと思う」として反対する。

 ただ、家庭を大切にする価値観という点では3人の意見は同じ。高市と野田は子育てや親の介護を公的サービスの利用なしで行った家庭については「子育て減税」「介護減税」といった措置も考えていいと強調した。(敬称略)

 編集委員 森田 清策