【社説】国連安保理 存在意義を失いかねない
またしても国連安全保障理事会が機能不全を露呈した。北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を受け、緊急の会合を開いたが、制裁強化に常任理事国の中国が反対し、非難声明も出すことができなかった。
安保理は、国連憲章で「国際の平和と安全に主要な責任を持つ」と規定されている。しかし、現在の状況では存在意義を失いかねない。
対北制裁緩和求める中国
弾道ミサイル発射は、安保理の一連の対北朝鮮決議で禁じられている。2017年に北朝鮮がICBM「火星14」「火星15」を発射した際には、安保理はいずれも全会一致で追加制裁決議を採択した。
しかし今回、中国は「早期の対話再開に道を開くため、(米国は)魅力的な提案をしなくてはならない」と主張。「当事者間の信頼を強める雰囲気を醸成する」として、逆に制裁の緩和を求めた。ウクライナ侵略で孤立するロシアも中国に同調し、制裁強化ではなく緩和の重要性を強調した。
北朝鮮が今回発射したICBM「火星17」は、米全土を狙える射程を持つとみられ、金正恩朝鮮労働党総書記は米国との対決姿勢を鮮明にしている。安易に制裁を緩和し、対話を再開しても、北朝鮮の核・ミサイル開発を加速させるだけだろう。中露両国の主張は無責任極まりないものだ。
ロシアがウクライナを侵略した際、安保理はロシアを非難し、即時撤退を求める米国主導の決議案を採決に付したが、ロシアが常任理事国の特権である拒否権を行使して否決された。ウクライナで多くの民間人が虐殺されても、安保理は何もできずにいる。
かつてシリア内戦でアサド政権が化学兵器を使用した際にも、アサド政権の後ろ盾であるロシアは安保理で拒否権行使を繰り返し、責任追及に向けた措置を合意できなかった。化学兵器は核兵器や生物兵器と並ぶ大量破壊兵器であり、攻撃に用いることは人道上許し難い。ロシアによるウクライナでの化学兵器使用が懸念される中、迅速で適切な対応ができない安保理の機能不全は目を覆うばかりだ。
ウクライナ侵略を正当化するロシアや、北朝鮮を擁護する中国が常任理事国の地位にとどまる限り、安保理が本来の使命を果たすことは難しい。中露両国を安保理から排除する改革は、喫緊の課題である。
日本はかねて常任理事国入りを目指しており、ドイツ、ブラジル、インドとの4カ国グループ(G4)で連携強化を図っていた。ウクライナ侵略を受け、岸田文雄首相は「ロシアの暴挙は新たな国際秩序の枠組みの必要性を示している」と述べ、常任理事国自らの侵略行為に国連が対応できない仕組みを問題視。「常任理事国による拒否権の行使は最大限自制されるべきだ」とも指摘した。
改革へ加盟国の理解得よ
常任理事国メンバーや拒否権を規定する国連憲章の改正には、常任理事国5カ国を含む国連加盟国の3分の2の批准が必要だ。簡単ではないが、改革に向け、加盟国の理解を得ていくことが求められる。